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“山の神”の名付け親は今――。
「お前かよ、って感じでしょう」 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byWataru Sato

posted2020/01/01 11:50

“山の神”の名付け親は今――。「お前かよ、って感じでしょう」<Number Web> photograph by Wataru Sato

3年連続5区だった北村聡は、最終年度は希望して2区を走った。今年から日立製作所女子陸上部の監督を務める。

「さすが山の神様、箱根の神様は強い!」

 そこから1年間、けいれん予防のために体にミネラルを蓄えようと、北村はにがりを飲み続けたという。周囲に先駆けて丈の長いコンプレッションソックスも履き始め、「ハイソックス北村」などと呼ばれるようにもなった。

 ただし、2年時はオーバートレーニング症候群を発症し、半年ほど練習できない期間があったこともあり、箱根本番でも思い切って勝負にいけるほどの状態には仕上がらなかった。

 その翌年は違った。3年生となった北村は自信をもって箱根本番を迎えていた。

「練習もしてきたし、自信はありました。今井さんと一緒に行けば俺は勝てると。下りが得意だったので、下りまで競り合っていければ勝機はあると思っていた」

 だが9km付近、大平台を前にして早々と「やばい、ついていけない」と遅れ始めた。神の領域に近づこうとした人間のバベルの塔。その崩れゆくさまを、北村の言葉を引用するかたちで実況アナウンサーはこう伝えた。

「やはり山の神様にはついていけません」

「さすが山の神様、箱根の神様は強い!」

「いま、山の神、ここに降臨!」

 北村は終盤にまたしても足がつり、区間4位にとどまった。神にはなれず、人のままだった。

「並んで勝負したら、一緒に走れば勝てるという自信があったけど、結局、全っ然でした」。

 北村が抜かれた場面では「様」がついて“表記”にブレも見られた「山の神」だが、16km付近で首位に立った際は「山の神・今井が~」と整い、最後のフィニッシュシーンを迎えることになる。

「いま、山の神、ここに降臨! その名は今井正人!」

 そして、この呼称は2代目、3代目へと受け継がれていくのだ。

【次ページ】 柏原「ネーミングライツがあったら」

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