箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
“山の神”の名付け親は今――。
「お前かよ、って感じでしょう」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byWataru Sato
posted2020/01/01 11:50
3年連続5区だった北村聡は、最終年度は希望して2区を走った。今年から日立製作所女子陸上部の監督を務める。
柏原「ネーミングライツがあったら」
北村は'16年に現役を退き、指導者の道を選んだ。当時も今も箱根に特別な思い入れはないという。
「大学3大駅伝の中では特別だけど、あくまでも1つの大会という感覚は強かった。僕らの年代では箱根駅伝は1年に1回のお祭りという感覚で、その先の世界を見据えている選手が今以上に多かったと思いますね」
だからこそ「山の神」を命名した自覚もほとんどなかったのだ。当時、神と呼んだ今井には、「勝手に名付けたのは北村だからな」と言われたりしながら、今では家族ぐるみでバーべーキューを楽しむなど親しい付き合いを続けている。
2代目・山の神の柏原竜二もかつて北村の名を挙げて「ネーミングライツがあったら、北村さんは大金持ちですね(笑)」と話していた。そのことを伝えると北村は「家宝にします」と笑ったが、やっぱりそこに特別なこだわりはないようだった。
「自分は山の神じゃないけど、ひとつ威張れることがあるなというぐらいですね。みんながうまく使ってくれたから定着したんでしょう。箱根ファンの人にしてみれば、お前(が命名者)かよ、みたいな感じだと思いますけど」
何気なく発したフレーズは箱根駅伝の歴史に残る言葉となった。