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CLで3連敗から16強進出の逆転劇。
小さなアタランタ、壮大な夢は続く。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/12/20 11:45
セリエAの中小クラブだったアタランタ。一貫した育成スタイルが実を結び、初CLで16強の快挙を成し遂げた。
9選手にオファーが来ていたという。
アタランタには、他クラブから見ても魅力的な選手が揃っていた。
昨季23ゴールを叩き出したストライカーのドゥバン・サパタ、変幻自在かつ強力な左足のキックを武器とするファンタジスタのヨシップ・イリチッチ、両翼や中盤には若くて有能な外国人選手が揃う。
昨夏には実に9人の選手にオファーが来ていたという。アタランタ自体は経営難ではなく、優秀な営業収入と選手の移籍金高騰を背景に3年連続で黒字を計上している。しかし選手の年俸総額を2700万ユーロ程度に抑えるなど、クラブ規模そのものは小さく保っている。そんな彼らにとって、移籍オファーを断るのは勇気のいることだ。
CLに挑むため巨額の投資を断行。
しかし、彼らは断った。
この夏に認めたオファーは、市場価値が急激に高まったイタリア代表DFジャンルカ・マンチーニのみ(ローマへ買い取り義務付きのレンタル)。逆に、フィオレンティーナがセビージャからの完全移籍を断念したコロンビア代表のルイス・ムリエルを、完全移籍で獲得。その額は1900万ユーロ。地方の小クラブにとっては、クラブ史上初となる巨額の投資だった。
加えて、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督の慰留に成功したことが大きかった。
2016年の就任から3シーズン、もともと優秀な人材を揃えたクラブは、この監督の下で劇的に強くなった。ゾーンディフェンス全盛のなか特殊なマンマークを徹底し、さらには幾何学的なポジションを取らせて、速攻をすぐさま作り出す組織的な攻撃を押し進めるなど、独特な戦術を駆使する指導者である。
格上のクラブを倒し、イタリア杯ではユベントスも下して決勝に進出した要因は、この指揮官の力によるところが大きいことは誰の目にも明らかだった。現にローマをはじめ、より経営規模の大きなクラブから引き抜きの噂も出た。
しかしペルカッシ会長は「生涯に渡って監督をしていただく」という言葉で、引き留めたのである。