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CLで3連敗から16強進出の逆転劇。
小さなアタランタ、壮大な夢は続く。
posted2019/12/20 11:45
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph by
Uniphoto Press
12月11日深夜、北イタリアにあるベルガモが沸いた。サッカーファンが街の中心部に一斉に繰り出し、歓喜の声をあげ、発煙筒を焚き、チャントを歌い続けた。
人口約12万人。小さな山の上にある歴史的中心街を軸に広がった古都は、近年ミラノなどで働く人々のベッドタウンになっている。そしてこの街は、今シーズン初めてCLに参戦したアタランタ・ベルガマスカ・カルチョのホームタウンなのである。
イタリアでも指折りの熱狂的サポーターたちは、愛するアタランタがシャフタールをアウェーで下し、グループステージ突破を決めたことに喜びを爆発させた。
歓喜の人だかりができたのは街の中心部だけではない。至近のオリオ・アル・セリオ空港には、試合が行われたウクライナのカリコフから飛んでくるチームのチャーター便の到着を待って1500人から2000人ともいわれる人々が集結。深夜2時の話だ。
飛行機が到着してチームバスが出てくると、一斉に輪を作ってバスのなかにいる選手、監督、スタッフらと一緒に歓喜の雄叫びをあげた。
お祭り騒ぎ連続のプロビンチャ。
育成部門を経営の主体に置き、トップチームはセリエA残留が出来ればよしとしていた経営規模のクラブである。
そんなプロビンチャのクラブでこんな“お祭り騒ぎ”が発生するのは、通常はシーズン終了後に残留が決まったときか、セリエBからAへ昇格したときである。ところが今年、アタランタのサポーターはずっと喜び続けている。
まずはEL出場圏内進出、5月にはラツィオとの直接対決を制して事実上CL出場権獲得を決めるなど、その度に街は異例のフィーバーに沸いていた。
そもそもクラブにとってCL進出は史上初の出来事。それでも彼らは、参加するだけで満足する集団ではなかった。開幕3連敗後に見事に持ち直して、まさかのグループリーグ突破を決める。その戦いぶりは、実に堂々としたものだった。
CL初参戦にあたり、彼らが決めたのは現有勢力を引き留めることだった。「勝手がよく分かっているチームで戦わなければならない。そこで選手をすべて手元に置くことにした」と、アントニオ・ペルカッシ会長は地元メディアに語っていた。