欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
CLで3連敗から16強進出の逆転劇。
小さなアタランタ、壮大な夢は続く。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/12/20 11:45
セリエAの中小クラブだったアタランタ。一貫した育成スタイルが実を結び、初CLで16強の快挙を成し遂げた。
シャフタール戦で味わった残酷さ。
とはいえ欧州最高峰のCLだけあって、序盤はうまくいかなかった。グループCには、戦力規模の突出したマンチェスター・シティ、この大会の常連でグループステージ突破の経験も数多いシャフタール、そして、CL参戦経験も多いディナモ・ザグレブだ。
ELでは十分戦えていたアタランタだったが、3連敗スタートとなってしまった。
待っていたのは、CL特有の激しさである。ディナモ・ザグレブとの開幕戦は、リーグ開幕が早くコンディションの上がっていた相手の勢いに押し捲られ、前半のうちに3失点。流れを修正できないまま0-4と大敗した。
ホームスタジアムが改修中でUEFA規格に合わないためミラノのサン・シーロを間借りした第2節のシャフタール戦では、より残酷さを思い知ることになる。
28分、サパタのゴールで先制したまでは良かったが、スピード豊かで技術も高い相手の速攻を浴びる。前半のうちに追いつかれると、後半は善戦するもゴールが遠く、逆に終了1分前にカウンターで仕留められるという悲劇を味わった。
資金が潤沢で、5大リーグのクラブとの競合にも勝ってブラジル人の若手を引っ張って来られるようなクラブが相手。何より相手は攻撃の激しさに耐えることにも、常に勝利をうかがう大会のテンションにも慣れている。「ELとは訳が違った」とは、試合後のペルカッシ会長の弁。そして、アウェーのマンC戦では5ゴールを浴びて惨敗した。
マンC相手のドローが自信を生んだ。
しかし彼らは勝負を諦め、大会を捨てることはなかった。ターニングポイントは第4節。マンCをサン・シーロに迎えての対戦だ。
7分にパスミスを取られてから3本のパスで崩され、最後はラヒーム・スターリングにシュートをねじ込まれた。それでも前半の猛攻を耐えた後には、別の展開が待っていた。
49分にロングカウンターから抜け出したアレハンドロ・ゴメスが、正確なクロスを放つ。これをファーでマリオ・パシャリッチが合わせて同点に。するとチームは完全に息を吹き返す。高い位置から開始するマンマークディフェンスで相手のパスコースを消し、ボールを奪う。
奪った後は選手を走らせてスペースを攻略できるパスコースが、幾重にもできている。逆に試合を有利に進め、GKを退場に追い込む。最終的に勝ち点3こそ奪えなかったが、自信の持てる戦いぶりだった。