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ノムさんの薫陶を受けた男が神宮へ。
楽天での13年、嶋基宏の献身の美学。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2019/12/23 11:30
12月4日にヤクルトと2年契約を結んだ嶋。推定年俸は5000万円。
とにかく感情表現が豊か。
楽天での13年間のほとんどをレギュラーとして過ごしたことからもわかるように、捕手としての能力は球界でも屈指だ。
今季、最下位だったヤクルトにとってその力は不可欠ではあるが、嶋がチームの重要なピースとなりえる要素は他にもある。
熱さと献身性だ。
フィールド上での嶋は、とにかく感情表現が豊かである。
送りバントを成功させればガッツポーズをし、勝ち越しや逆転タイムリーを放てば、ベース上で激しく手を叩き喜びを爆発させる。守備でもピンチで三振を奪えば、投手以上に雄叫びを上げることだって珍しくはない。
ベテランでも、若手選手のように。
それについて本人は、「つい、熱くなっちゃうんで」と自然発生的な感情を示しつつも、チームへの波及効果にも言及していた。
「ただ、『勝ちたい』って気持ちが強いだけで。でも若手だったり他の選手がそういう姿とか、ベンチで声を出してくれていたら試合に出ている選手たちは非常に力になるし、勇気づけられるのはあります」
選手会長や主将を歴任してきたように、楽天時代の嶋はチームの精神的支柱だった。それは、どんな立ち位置であったとしても、熱さと献身を貫いたからである。
経験を積む。中堅やベテランと呼ばれる年齢に差し掛かると、チームからもある程度の立ち居振る舞いを許容されるものだが、嶋はベンチスタートであっても、それこそ1、2年目の若手選手のように最前列に座って声を張り、全身を使って気持ちを表現する。
勝っていればテンションはなお上がる。負けていればなおさら、熱さを打ち出す。