何度も通った横浜FCの練習場。

　もともと地元愛の強い少年だった。横浜市旭区出身の彼は、物心がついた頃から同じ横浜に本拠地を置くマリノスと横浜FCのファン。日産スタジアムやニッパツ三ツ沢球技場に足繁く通った。横浜FCの練習場がある保土ヶ谷は自宅の近所だったこともあり、よく練習見学に訪れていたという。

「両方とも大好きなクラブでした。横浜FCのトップチームの練習を見ていても、小学生目線ですが、すごく雰囲気が良くて、選手たちも優しく接してくれました。特に三浦知良選手や南雄太選手は輝いて見えて、『こんな選手になりたいな』と憧れの存在でした。なので、ジュニアユースに入った時は『このクラブで何が何でもプロになる』という覚悟を決めて入りました」

　それ故にユースに上がれないとの通告は計り知れないほどショッキングな出来事だった。

「またか。俺はどこに行っても必要とされないのかな。誰にも評価されないんじゃないかな……」

　ユース昇格への道が断たれた日から、寝る前になると必ずこう考えた。

新しい挑戦の場所を見つけた。

　しかし、古宿の心は決して折れることはなかった。

　同じ横浜FCジュニアユースでチームメイトだったMF浦川流輝亜が、青森山田高でプレーする兄の背中を追って青森山田中に編入する姿を見てきたことで、「（青森山田を）意識するようになりました」と、新たなチャレンジ精神が芽生えてきた。

　浦川に情報を聞きながら、覚悟を固めた彼は、ジュニアユースのコーチに青森山田高への進学を希望した。すぐに練習会参加の段取りが進み、ついに合格を手にした。

「練習会には『青森山田の1本で行く』と心に決めていたので、合格をもらった瞬間に入学を即決しました」

　こうと決めたら突き進む。まさに彼の人間性を表している行動だ。愛する横浜を離れ、遠く青森の地にやってきた。自分にとって2度目の再起となる場所で、彼は黙々とサッカーに打ち込んだ。

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