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棚橋弘至のいない1.4東京ドーム。
クリス・ジェリコが誘うエース引退。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2019/12/18 19:00
見事にパンプアップされた筋肉美を披露する棚橋弘至。クリス・ジェリコとの対戦は楽しみだが、それ以上の話題が欲しい。
短命だった2019年のIWGP王者・棚橋。
今夏のG1クライマックス後、棚橋はシングルマッチを2試合しか戦っていない。
9月1日、ザック・セイバーJr.にロンドンで挑戦して勝った英国ヘビー級戦と、そのリターンマッチとして9月15日に別府で行われた同王座防衛戦でセイバーJr.に敗れた2試合だけだ。
それ以来、棚橋はタッグマッチしか戦っていない。10月の両国国技館や11月の大阪府立体育会館といった大会場でも棚橋はシングルマッチを戦うことはなかった。
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2019年1月4日のドームで、棚橋はケニー・オメガに勝ってIWGPヘビー級のベルトを巻いた。棚橋のデビュー20周年の幕開けは華やかだったが、2月11日に大阪でホワイトに王座を奪われ短命王者に終わった後は、入場の派手なエンジン音とは逆のギャップを感じずにはいられなかった。
ジェリコから「バカハシ」呼ばわりも。
6月9日の大阪城ホールでオカダがジェリコ相手にIWGPを防衛した後、オカダが場外でジェリコに痛めつけられた。その時、放送席にいた棚橋が助けに入った。これが、ジェリコの怒りに触れて「バカハシ」とまでなじられた。
そして11月3日の大阪府立体育会館で棚橋にジェリコからお決まりのビデオ・メッセージが送られて来た。
「1月5日。ペインメイカーvs.エース。これがオマエの引退試合だ」(ジェリコ)
「ちょうど、来年の1.4、1.5東京ドーム、空いているから」と棚橋は受けた。
これで、棚橋vs.ジェリコは決まったのだった。棚橋は筋肉パフォーマンスで意気込みを示したが、次のシリーズ「ワールドタッグリーグ」では棚橋のエンジンは、まだ、うまくかからず、勝点も伸びなかった。それでも、棚橋はハイフライフローを繰り出して、まだ、飛べることは強調した。ドラゴン・スクリューのキレも悪くはない。
棚橋は12月8日のタッグリーグ最終戦の広島グリーンアリーナでジェリコのお決まりのような「襲撃」に備えていた。「ジェリコはやってくるはずだ」と信じて背後にも注意を払っていた。それなのに、ジェリコは多忙なのか会場に姿を見せずに、またしてもビデオ・メッセージを送って来た。
「これがオマエの引退試合だ。サヨナラ」
棚橋は肩透かしを食らった格好だが、ジェリコばかりか、不思議なことに棚橋も具体的なアクションを起こさない。