菊島・母「圧力をかけたのは、お父さんです（笑）」

加藤「目が見えていない分、僕もそうなんですけど、なぜできなかったのかをちゃんと理解しないといけないんです。たとえばドリブルでボールがこぼれた。じゃあ1つ前の動作に戻って、ここにボールを置けば良いのかとか。足のどこに当てれば上手くいくかを繰り返し確認する。ただ単に回数をこなすのではなくて、考えてやっていたからこそできるようになったんだと思います」

松岡「考えたからこそ、目ではなく、感覚で見えるところにたどり着いたということですね。お母さん、よく圧力をかけましたね。あのドリブルをやって欲しいって」

菊島・母「圧力をかけたのは、お父さんです（笑）」

加藤「うちのチームの監督ですけど、たぶんチームの中でソラを一番上手い選手にしたくて、それでああいうことを言ったんじゃないかな。田村さんのドリブルがすごく奪いづらかったので、あれをできるようになって欲しいと」

松岡「そのドリブルを自分のモノにしてから、ブラサカがどう変わりましたか」

菊島「単純に人が抜きやすくなった」

加藤「僕がケガから復帰して、初めてソラと一緒に試合に出たとき、残り数秒くらいでソラがドリブルシュートを決めたんですよ。そこからは毎試合点を取るようになって、チームも初めて全国で上位に進めた。チームとしてのプレーの幅も広がっていきました」

菊島「まずはチャレンジすることが大切」

松岡「ソラさんの覚醒が与えた影響って大きいんだね。今日、話を聞いて一番うれしかったのは、ソラさんが努力をして、自らの行動で道を切り拓いていったこと。困難を前に尻込みしている人ってたくさんいると思うけど、ソラさんだったらどんな声をかけますか」

菊島「自分はチャレンジしてできるようになったので、まずはチャレンジすることが大切かなって」

松岡「とにかく挑戦してみろと。圧力をかけられても、むしろそれをプラスの力に変えることもできるよって。いやあ、良いアドバイスです！」

　対談も佳境に入り、松岡さんが来年に迫った東京パラリンピックの話題に触れた。カトケンは現男子日本代表の中心選手で、本戦での活躍が期待されている。一方のソラさんは実力が十分ありながらも、パラリンピックには出場できない。なぜなら……現状、パラリンピックに出場できるのは男子選手のみだからだ。女子は競技人口自体が少なく、男女混合チームの参加も認められていない。また、パラリンピックに出場できるのは、障がいの程度がB1（全盲～光感／GKのみ弱視でも可能）であり、弱視であるソラさんは女子の参加が可能になったとしても、参加ができない。

松岡「まずは健人さんにお聞きします。2020年にパラリンピックが自国で開催されますが、今はどんな思いですか」

加藤「自分は北京パラの時から代表に選ばれているんですけど、残念ながら3大会連続で出場を逃して、パラリンピックには1度も出場できていません。じつは日本はまだパラリンピックに1度も出られていないんです。だからまず、その代表の8人に選ばれて、試合にもなるべく多く出られるように頑張っていきたい。その上でメダルという大きな目標があります」

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