菊島「やっぱり、パラリンピックには……」

松岡「勝手なことを言いますけど、ソラさんにもパラリンピックに出てほしいな」

加藤「そうですね。世界でもこれだけのドリブルができる選手はほとんどいないので」

松岡「でも、女子選手はパラリンピックには出られないんですよね？」

菊島「今はまだ、男子のB1(全盲～光覚)の方しか……。出たい気持ちはあるんですけど、規定が変わらない限りは無理なので」

松岡「そうなんですか。すごく点が取れるのにもったいないね」

加藤「男子も今、得点力不足が課題なので、ソラがいれば間違いなく活躍できる。ソラは今年、埼玉で開催された女子の国際大会で世界選抜を相手に9点取って、10－0で日本を勝利に導いてますからね」

松岡「そんなに！　ソラさんにとって今後の目標は何ですか」

菊島「やっぱり、パラリンピックにはいつか出てみたいです」

松岡「違う競技に行こうとは思わない？」

菊島「いや、サッカー以外はできないので（笑）」

松岡「できそうだけどなあ（笑）。東京は無理でも、その次のパラリンピックには出場できそうとか、女子選手が出場できる可能性は見えてきているんですか」

加藤「今のところはまだ何とも。世界的に見てもまだ女子の競技人口が少ないので、裾野が広がっていけば。ただ、ソラが上手くなることは男子選手の刺激にもなるので、日本のブラサカの向上にはつながっていると思います」

松岡「ソラスペシャルができる男子選手は日本にどれくらいいるんですか」

加藤「ソラスペシャルは……いないですね」

松岡「いないの！　じゃあ、まずはカトケンに教えてあげなきゃ。カトケンはソラさんが覚醒する前の状態なんだから、今度はソラさんが圧力をかけないと」

加藤「ハハハハ。まあ、2人ともできたらね。今は僕が守備をして、ボールを奪って、ソラにパスを出す役割なので」

菊島「そうやって、支えてもらってます（笑）」

　松岡さんがふとグラウンドに目をやる。広い敷地にサッカー場やフットサルコートが何面も並び、練習に打ち込むにはもってこいの環境だ。

松岡「ここは素晴らしい環境ですね」

加藤「そうですね。色んな方にサポートしていただいて、今はこうした人工芝のコートで練習ができています。ただ、以前は定期的に使える練習場がなくて、場所を転々とし、河川敷でやっていたりもしたので……。今年はブラサカの日本一を決める日本選手権で優勝できて、少しは恩返しができたのかなって」

松岡「カトケンとソラさんが出会ってなければチームの優勝もないんだから、すごい出会いだね。ソラさんに聞くよ。ソラさんにとってカトケンはどんな存在ですか」

菊島「えっ、どんな？　お兄ちゃん……」

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