セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
トッティ、愛するローマと喧嘩別れ。
「42歳の坊や」の見苦しい去り際。
posted2019/12/11 11:15
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Uniphoto Press
ローマの試合を見逃してなるものか。
セリエA第14節のベローナ対ローマ戦が始まって間もなく、たまたまローマ市内でタクシーをつかまえたスペイン紙記者がいた。彼はすぐに運転手の生返事に気がついた。
肩越しに前を覗き込むと、時速110キロで飛ばす運転手は、フロントガラス手前に固定したスマホのローマの試合中継に夢中になっていた。記者は自分のSNS上にその光景をアップし、後は運命を天に委ねた。
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もちろんイタリアでも“ながら運転”は厳罰の対象で、運転手はそれを知っていた。彼はどうしてもローマの試合を見たかったのだ。
新指揮官パウロ・フォンセカに率いられた今季のローマには、自由闊達の気風がある。彼らは何かから解放されたかのように躍動している。第14節終了時に積み上げた勝ち点28は、昨季の同じ時期より8ポイントも多い。
敵地での第15節では首位インテルを零封、勝ち点1をもぎ取って来季CL出場圏間近の5位にいる。最終節を残す今季のELも決勝トーナメント進出目前だ。
“コンテの2番手”が素晴らしい指導。
昨シーズンの途中、ローマは闘将コンテに次期監督就任を打診していた。だが、彼らは混乱期の落ち目と見られたか、あえなく袖にされた。
代わりに永遠の都へやってきたポルトガル人監督は、セカンドチョイスだったことを嘆くわけでもなく、トリゴリア練習場での初日からモットーを繰り返し、指導に熱を入れた。
「勇気と上昇志向を持て」
ハイプレスと献身を求め、サイドバックを使って故意にチームバランスを崩しながら前がかりに攻める戦法は、次々にタイトルを獲得したシャフタール時代に見覚えがある。