セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
トッティ、愛するローマと喧嘩別れ。
「42歳の坊や」の見苦しい去り際。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2019/12/11 11:15
ローマの王様として誰もが愛したトッティ。相思相愛だったはずのクラブをこんな形で去るとは……。
ふんぞり返り、ぞんざいな物言い。
言っていいことと悪いことの区別がつかない男に、数十億円の決済を握る重要なポストを任せる社長や上司はいない。そのうえ、トッティの会見での態度はあまりにもいただけなかった。率直に言って、幻滅した。
印象ではなく事実だけを書くと、トッティはスーツを着てネクタイこそ締めていたが、会見の間、左肩を椅子の背もたれにあずけ、半身でふんぞり返り、ぞんざいな口の利き方をした。
ローマの方言や語彙の多寡の問題じゃない。真面目な話をする場のはずなのに、質疑応答の間中、場末のカラオケスナックのようにマイクの下端を斜めに握り、プラプラさせていた。同年代で同時代を生きたはずのユベントス副会長ネドベドやインテル副会長サネッティなら、絶対にこんな振る舞いはしない。
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トッティは「(クラブを去る)今日、死んだ方がましだった」とも言ったが、四十を越えた身でこのご時世に何と幼稚で無責任な言葉だろうと白けたし、呆れた。
「この42歳のひきこもり坊やは……」
彼の経営陣攻撃をそのまま受け取ったロマニスタはクラブ相手に憤慨したが、他のクラブのファンたちはトッティに皮肉たっぷりの祝辞を送った。
「この42歳の引きこもり坊やは、ようやく“外の世界”に出る気になったらしい。おめでとう!」
僕は元主将の退団を“ローマ解放”だと受け止めた。
ローマは今こそ、ようやくトッティの呪縛から解き放たれたのだ。
現主将フロレンツィは、過去の主将たちと同様やはりローマ出身だが、指揮官の構想から外れベンチ暮らしが続いている。冬のレンタル放出が噂されているものの大きな問題にはなっていない。主将と指揮官は互いに正直で真摯な姿勢で接しているからだ。
彼らは未来に走り出している。
タクシー運転手はともかく、フォンセカと新時代のローマにスピード制限はない。