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メッシ&スアレスも久保建英も凄いが、
バルサで渋く光った「右の仕事人」。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byGetty Images
posted2019/12/09 20:00
マジョルカ戦で自らのバロンドール受賞を祝うハットトリックをマークしたメッシ。だが、“王様”の活躍を支える2人の黒子にも賞賛を送りたい。
4番への拍手に、献身的な20番。
後半に入っても、2人は心憎かった。ダイレクトパスで食いついてきたマーカーを無力化したり、マーカーの死角に入って最終ライン裏に抜け出たり。変幻自在の動きでマジョルカの守備陣をズタズタにした。
48分にメッシの落としを受けてラキティッチのミドルは、ボール1個分だけ左に外れた。ここでゴールが決まれば渋い働きぶりへの“ご褒美”のようなものだっただけに、サッカーの神様も酷なことをする。でも72分にラキティッチがピッチを去るとき、カンプノウに万雷の拍手が鳴り響いたのは「僕らは貢献度をわかってるよ」という意味がこもっていたはずである。
そして83分、この日を締めくくるバルサの5点目に絡んだのは「20番」である。ブスケッツの浮き球パスに飛び出したセルジ・ロベルトが身体を投げ出してスアレスに折り返し、その落としをメッシがニア上にズドン。メッシの6度目バロンドールを祝うゴールラッシュを締めくくるにふさわしい崩しだった。
メッシが自由を謳歌できる理由。
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……何回ラキティッチとセルジ・ロベルトって書くんだよ、と思っただろうか。でも決定的なプレーの「前」、ハイライト映像でカットされがちな場面の大切さを最後まで実感させてくれたからこそ、記しておきたかった。メッシらチームメートがよりよい判断をできるように前もってプレーするのだから、気が利いていると言うしかない。
現地紙の評価を見てみると『ムンド・デポルティーボ』も「メッシは多才だが、1人ではなかった」と2人の活躍を称えている。『マルカ』紙の採点ではラキティッチが3つ星満点、セルジ・ロベルトは2つ星の評価を受けていた。チームが2失点したから最終ラインのセルジ・ロベルトへの評価は差し引かれたのかもしれないが、その仕事ぶりを見たらラキティッチと同じくらい絶賛してもいいのに、と思うほどだ。
これだけ右で献身的に動いてくれるのだから、メッシも自由を謳歌できる。左サイドがスタートポジションだが、中央に入ったりサイドに張ったりしながら、右の2人を使ったり、使うフリをして自ら仕掛けたり。これだけ“判断の幅”が広がれば、やりやすいのは間違いない。
序盤戦でどうも噛み合わなかったバルサの攻守だが、ラキティッチとセルジ・ロベルトという右のラインができたことで、チームに一本の芯が通った印象だ。