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8年間でスタメンマスクは10試合。
DeNA西森将司、去り際の笑顔と感謝。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byMasashi Nishimori/Instagram
posted2019/12/06 19:00
多くのファンの記憶に残る選手ではなかったかもしれない。しかし、西森将司は間違いなく日本最高峰のリーグで戦う「プロ野球選手」だった。
球団の歴史の1ページに自分の名前が載った感覚。
5月1日のドラゴンズ戦で、プロ入り初の、一軍でのスタメンマスクを託された。途中交代したもののチームが勝利すると、次戦以降も先発出場の機会を得る。1日以降の11試合中10試合でスタメンに名を連ね、チーム戦績は7勝3敗と上々だった。
8日の試合では、ベイスターズにとって2011年10月以来およそ2年半ぶりとなる対ジャイアンツ3連戦でのカード勝ち越しを敵地東京ドームで決めた。7-6と競り合っての勝ちゲームは、西森が初めて、そして現役生活唯一のフル出場を果たした試合でもあった。
「ぼくのおかげとは思わないですけど、ぼくが試合に出ていた時にそういう出来事があったのは単純にうれしかった」
球団の歴史の1ページに自分の名前が載った感覚があった。
しかし、つかんだかに見えたチャンスは雲のように消える。西森にスタメンの機会が与えられたのは、5月13日のドラゴンズ戦が最後となった。
逃した理由に察しはついた。打てなかったのだ。
「常に結果が欲しい、結果が欲しいって……」
10試合で22打数1安打6三振。四死球は0。Hランプの灯らない打席が続くうち、焦りを募らせ、手を出すべきでない球に手を出しては凡退した。
「欲しがったらダメって理解してるのに、欲しがっちゃうんです。明日のスタメンが保証されてるわけでもなかったから、常に結果が欲しい、結果が欲しいって。悪循環に陥っていました」
5年前を思い返し、つい苦笑いがこぼれる。
「あそこでもうちょい打ってたら……お金はもうちょい稼げたかな」
ベイスターズの捕手の座は、黒羽根利規、高城俊人、嶺井博希らによって争われ、2016年には新人の戸柱恭孝がいっきに主戦に躍り出る。2018年途中には、トレードで伊藤光が移籍してきた。西森が割って入る余地は年を追うごとになくなっていく。