球体とリズムBACK NUMBER
優勝目前マリノスが提示する先進性。
松原健「従来のSBとは180度違う」。
posted2019/12/02 12:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
連覇中の王者に引導を渡すような完勝劇だった。
11月30日のJ1第33節、横浜F・マリノスは川崎フロンターレのホームで、4-1の快勝を収めた。2位のFC東京が浦和レッズと1-1で引き分けたため、横浜のリーグ優勝こそ持ち越されたが、この日も今のマリノスの勢いと際立つ特長が存分に表れていた。
わけても、4度のゴールシーンに。
マテウスが豪快なドリブルでサイドをえぐり、速い折り返しをファーサイドの仲川輝人が「お腹あたり」で決めて、序盤に先制。横浜の快進撃を牽引する27歳のアタッカーは「逆サイドに自分がいるのは(チームの)決まりごと。でもゴールは偶然というか」と謙遜するが、出場5試合連続得点で同僚マルコス・ジュニオールと並ぶ15得点となり、スコアランキングのトップタイに立った。
また前半に先行したのは、この6連勝のすべてに通じるものだ。
後半の3得点にも、アンジェ・ポステコグルー監督の教えが感じられた。69分のチーム3点目のシーンでは、大津祐樹からの右奥へのスルーパスに仲川が抜け出し、指揮官から求められている「ワンタッチのクロス」で、エリキのゴールをお膳立て。89分の4点目の場面では、ハイプレスで相手からボールを奪ったエリキがGKとの1対1を迎え、ハットトリックの可能性もあるなか、並走する遠藤渓太にギフトを贈った。
自らの記録よりもチームの勝利を優先したブラジレイロの判断にも、利他性を重んじる指揮官の哲学が滲む。
SBが“トップ下”からアシスト。
ただ戦術的なカラーがもっとも顕著だったのは、49分の2点目だと思う。なにしろ、ライトバックの松原健が“トップ下の位置から”左前方にスルーパスを通し、駆けてきたエリキの鋭いシュートをアシストしたのだ。
偽のSBと呼ばれるこの役割は、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督が考案したものとされるが、最近のシティでは以前ほどSBが中に入っていかない。流動性の高い攻撃という点において、今はシティよりもマリノスの方が色は濃い。