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イスラム国家で女性がサッカーを……。
男子チームの女性監督、サルマの闘い。

posted2019/11/24 11:30

 
イスラム国家で女性がサッカーを……。男子チームの女性監督、サルマの闘い。<Number Web> photograph by Ashraf Shazly/AFP

2018年まで指揮を執っていたハルツーム地方の男子チーム「アルガダーレフ」での練習風景。

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ポリーヌ・オマンビイク

ポリーヌ・オマンビイクPauline Omam Biyik

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 読者の皆さんは、スーダンにイスラム圏としては初の――男子チームの、それも1部リーグのチームを指揮した唯一の女性監督がいることをご存じだろうか。

 イランで女性のサッカー観戦が容認されるなど、イスラム世界でも近年は少しずつスポーツとサッカーの世界における女性の解放・権利の拡大が進んでいるが、習慣や因習に基づく女性への制限はまだまだ多い。男女同権とは別世界の、女性が多くを望めない世界がそこには厳然と存在する。

 そんなイスラム世界のスーダンで、どうして25歳という若さで女性が1部リーグの監督になれたのか。『フランス・フットボール』誌10月8日号でポリーヌ・オマンビイク記者がレポートしている。

監修:田村修一

闘う女性指揮官、サルマ・アルマジディ。

 髪をヴェールに隠しながら足にはスパイクを履き、ピッチに決然とした視線を送る。サルマ・アルマジディは、2016年、イスラム圏で初の男子チームを率いる女性監督となった。イスラム社会のメンタリティの変革を望みながら。

 サルマ・アルマジディは闘わねばならなかった。

 サッカーは男のスポーツであるという強固な固定観念に対して。男性を差し置いて女性が自己主張し、チームを率いるのを忌み嫌うスーダンの文化に対して。彼女の前に立ちはだかった様々な障壁に対して。

 宗教も生活習慣も捨てることなく、自身が受けた伝統的で保守的な教育を拠りどころとしながら、周囲を傷つけることもなく。ときには拳を振りあげ、また単に沈黙を貫く周囲の状況に抗いつつ、彼女はひとつの成功のモデル――解放と寛容の真のシンボルとなったのだった。

 2016年、25歳の年にサルマはスーダンで最初の――そして現在までただ1人の1部リーグの女性監督となった。それは女性がスポーツ面でもしばしば周辺に追いやられているイスラム社会において、極めて例外的なことであった。

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サルマ・アルマジディ

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