熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
フラメンゴ火災の悲劇から9カ月後、
親友にU-17W杯優勝を捧げたラザロ。
posted2019/11/25 10:30
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images
後半、ピッチの横でウォーミングアップをしていたら、リケルモの顔が頭に浮かんだ。
あいつのためにも、絶対にゴールを決めてやる――そう思ったら、体の内側からとてつもなく大きな力が湧いてきた。
出番が来た。特に固くならず、落ち着いてピッチに足を踏み入れた。
右からクロスが来た。ゴール前の密集を通過し、目の前に落ちてくる。これだ。そう思って、何の迷いもなく右足を振り抜いた。ボールはファーサイドへ一直線に飛び、ゴールネットを揺すった。その瞬間、世界が止まった。
このゴールは、僕1人が決めたんじゃない。リケルモが助けてくれたのだから、僕たち2人のゴールだ。そして、2人で世界一になったんだ。そう思っている。
決勝で苦戦を強いられたブラジル。
11月17日夜、ブラジルの首都ブラジリアで行なわれたU-17ワールドカップ(W杯)決勝。地元ブラジルは、非常に苦しい戦いを強いられていた。
圧倒的に押しながら、シュートがバーやポストに嫌われ、あるいはメキシコGKの信じられないようなセーブに阻まれ、ゴールをこじ開けることができない。逆に、後半21分、守備のミスから失点。メキシコ応援団が狂喜し、地元観衆からは悲鳴が上がった。
26分、MFラザロ(フラメンゴ)がピッチに入った。彼は、準決勝フランス戦でも全く同じ時間に投入され、試合終了直前に逆転ゴールを決めている。切迫した声援が飛ぶ。
39分、ブラジルはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定でPKを得ると、CFカイオ・ジョルジ(サントス)が決めて同点。さらに逆転を狙って必死に攻めるが、メキシコも全員が体を張って防ぎ続ける。
既定の試合時間が過ぎ、アディショナルタイムは4分。観衆は総立ちで、まるで選手と一緒にプレーしているかのようだ。