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家族を愛し、スポーツ万能の天才騎手。
スミヨンの素顔は“悪童”ではない!
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byTadashi Shirasawa
posted2019/11/16 09:00
インタビューに応じてくれたスミヨン。その鮮やかな騎乗を長期間日本でも見たい……と思うファンもいるだろう。
デットーリに、ペリエに憧れて。
「本当の意味で騎手に憧れたのはフランスの競馬学校に入る前年。14歳のときに見た、ラムタラが勝った凱旋門賞だったかもしれません。あのときのフランキー(ランフランコ・デットーリ騎手)の騎乗は強烈な印象で、それは僕が求めるジョッキーの理想像となりました」
「憧れの人が、いまもまったく色褪せないバリバリのトップジョッキー。すごいことです。そして、この秋は日本で一緒のレースに乗れそう。ワクワクしています」と、デットーリに対するリスペクトを瞳を輝かせながら語るスミヨン。
話を聞いていると、もうひとり絶大なリスペクトの対象がいることが伝わってきた。それは、日本人にもおなじみのオリビエ・ペリエ騎手だった。
「オリビエほど、押しの強い、馬にパワーを伝えることができるジョッキーはほかに見たことがありません。僕がアメリカや香港、日本で乗ったあとにフランスで本格的に乗るようになって、現地のチャンピオンジョッキーはずっとオリビエでした。
大きなレースとなると必ず勝つのがオリビエ。普段は手を抜いているというわけじゃなくて、ジョッキーなら誰もが感じるプレッシャーに対する強さがすごいんです。だから、彼のことはずっと尊敬している。日本に来た外国人騎手で、日本の競馬を変える役割を果たしたのはオリビエだと思っていますしね」
ルメールについてもきちんと分析。
話に熱がこもると、ひとり語りが長くなるのもスミヨンの特徴のようだ。組み立てが理路整然としていて、そのまま文章に起こせるのもすごい。日本で大活躍のクリストフ・ルメール騎手についてもきちんと分析してくれた。
「ルメールの騎乗ぶりがフランスにいるときと変わったとは思わない。短期免許で来ていたときより、日本の競馬に合わせているとは思うけど、基本的には変わっていないよ。僕はフランス人ではない(ベルギー人)けど、フランスの競馬はジョッキーのレベルが高い。フランスの競馬学校を出た騎手が世界中で活躍していることでも明らかなように、学校が素晴らしいんです。ルメールもフランスで活躍したあと日本に来て、フランスのレベルの高さを日本で証明してくれています。
フランスで活躍しているジョッキーは、まとまった休みを取って家族との自由な時間を楽しみながらトップジョッキーをキープする。彼は休みが取れないことを承知で日本にいる。もちろん稼ぐのは自分のためではありますが、日本の競馬界のために頑張っていることについては率直に感心します」