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家族を愛し、スポーツ万能の天才騎手。
スミヨンの素顔は“悪童”ではない!
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byTadashi Shirasawa
posted2019/11/16 09:00
インタビューに応じてくれたスミヨン。その鮮やかな騎乗を長期間日本でも見たい……と思うファンもいるだろう。
日本のショッピングも楽しんで。
発売中のNumber990号に掲載されているインタビューは、みやこS(11月3日、京都ダート1800m、GIII)の翌日に行われた。
みやこSは6番人気のウェスタールンドに騎乗して3着に奮闘したが、3コーナーで内に斜行したことで3万円、直線入り口で大本命馬インティの内側に僅かにあいた狭い隙間を際どくついて追い抜いたことで5万円と、一つのレースで2カ所のペナルティーを科せられた。
もしかしたら「そんな(インタビューを受ける)気分じゃない」と、怒ってキャンセルという事態まであるのかと身構えていたのだが、それは杞憂に過ぎなかった。
約束の時間から少しだけ遅れて、センスの良い私服をまとって現れたスミヨンは、モデルのようなカッコ良さだった。その表情には穏やかな笑み。前日のペナルティーについても、「騎乗停止にならなくてよかった」と反省する余裕まで見せて、以前の“悪童”のイメージとかけ離れた柔らかいオーラを放っていた。
ほんの少しの遅刻の理由は「迷子になりそうになりました」。話を伺う場所はスミヨンの宿泊先のラウンジに設定されていたため、思わず「えっ?」とのけぞりそうになったが、わけを聞けば納得。
スミヨンは空いた時間を利用してショッピングに出かけ、自分用の洋服をたっぷりと買い込んで、大荷物を両手に提げて歩いて帰ってきたのだ。外国に来ているのだから、宿泊先とはいえ少し遠出をすれば迷うのも無理はない。
「日本には小さめのサイズの服にいいデザインのものが豊富にあるから、来日のときの楽しみにしている」という真偽不明の噂があったが、それは完全に正しい情報だった。「いつも、帰国するときには満タンのスーツケースが1個増えてしまっています」と、通訳の木村さんも認めている。実は、日本での生活を意外なほど気に入っているスミヨンなのだ。
運動神経抜群、頭も切れる名手。
子供のころから運動神経は抜群で、頭も切れて口も達者だったクリストフ・スミヨン。おそらく、どんな道に進んでも一流の領域に達していた人だろうなと、今回の1時間のインタビューで容易に想像できた。
ベルギーで障害騎手として活躍していたお父さんの影響を受けて、7歳から馬にまたがり、ほどなくして地域のポニーレースに出場する腕前となり、しかも難なく優勝。早熟な子供だったスミヨンは、そのときにジョッキーになることを決めたという。
馬に乗っていて、難しいとか苦しいとか、ネガティブな気持ちになったことがなく、ほかの仕事との比較をするまでもなく、「これしかない」と騎手を目指したのだ。そして、プロになってからもずっと、馬に乗ることについてネガティブな気持ちとはまったく無縁で来られたというのだから、7歳にして人生の最高の選択をしたことになる。