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家族を愛し、スポーツ万能の天才騎手。
スミヨンの素顔は“悪童”ではない!
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byTadashi Shirasawa
posted2019/11/16 09:00
インタビューに応じてくれたスミヨン。その鮮やかな騎乗を長期間日本でも見たい……と思うファンもいるだろう。
「ラグビーはやらないよ(笑)」
日本ではプライベートの姿がほとんど伝わっていないスミヨンだが、奥さんとの間に3人のお子さんがいて、趣味も多い。
「体を動かすことが好きなので、サイクリング、ゴルフなどスポーツはなんでも好きです。阪神タイガースのヨシダヨシオ(吉田義男)さんがフランスに野球の普及に来られた影響で、野球もやりました。いまは山登りが一番好きかな? モンブランでアイスクライミングもしました。富士山も登りたいですね」
「さすがにラグビーはやらないですけどね(笑)」と、Numberに掲載されたラグビーW杯の記事を指さしで笑うスミヨン。ただ、冬の富士山は見た目以上に危ないので、夏にしてくださいと、そこだけは全力で止めさせてもらった。
日本での騎手免許取得は……?
どうしても気になるので、ルメールのように日本の騎手免許を取得する気持ちはあるのか、と聞いてみた。
「現状はアガ・カーンとの専属契約もありますし、現時点では不可能な話です。家族もいますし、ほかにも解決しなくてはいけない問題はいくつかありますが、興味は大いにあるし、可能性もあるはずです。いまの日本の競馬は世界一だと思いますし、そうしたレベルの高いところで自分の職業を全うするのは素晴らしいことですからね。
19歳で初めて来たときと比べると、日本は格段に過ごしやすい。ルメールやミルコ(・デムーロ)が安心して競馬に専念できる環境というのを実感しています。試験を受けるかどうかは別として、日本語は勉強したい。そこは強く思っているところです」
エリザベス女王杯を勝った翌週の水曜日。栗東トレーニングセンターでスミヨンと再び出会うと、こちらが「おめでとう」を言う前に「You bring lucky」と、ジョッキーには似つかわしくないほどの大きな手で握手を求められた。
もちろんインタビューがスミヨンに幸運を運んできたわけではないのだが、インタビュアーとしてこれほどうれしい言葉はなかった。強気で無遠慮でとっつきにくい男のイメージは、いまや完全に誤りなのだ。