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甲斐拓也、日本シリーズで漂う風格。
エースに要求した内角と「丸封じ」。
posted2019/10/22 11:40
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Nanae Suzuki
ホークスは3年連続日本一に向けて本拠地で連勝スタートを決めた。勝因は様々挙げられるが、今年の日本シリーズでも「丸封じ」を成功させたのは非常に大きかった。
巨人の3番打者・丸佳浩は、前後を打つ坂本勇人と岡本和真と共に巨人打線のキーマンなのは言うまでもない。昨年の日本シリーズを制したホークスの勝因の一つが、広島の3番打者だった丸を抑え込んだことにあったのはまだ記憶に新しいところだ。6試合で打率.160(25打数4安打)、12三振に封じたことで赤ヘル打線を機能不全に陥れたのだった。
今年の日本シリーズにおいても3番で打線を寸断することが出来れば、言わずもがなホークスの勝機は広がる。ホークスが果たして、巨人の丸に対してどのような攻め方をするのか。これは大きな注目点だった。
相手の打線を壊す投球。
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第1戦の大事な先発マウンドを託された千賀滉大は、それを十二分に自覚していた。
ダルビッシュ有がかつて、こんな話をしていた。
「エースというのは自分が投げるその試合を抑えるだけでなく、明日もチームが勝つために相手の打線を壊してしまう投球をしなければならないんです」
ホークスのエースであり、昨オフにはダルビッシュのいる米国を訪ねて弟子入りした千賀はまさしくそれを体現していた。
とにかく、しつこく何球も内角を攻め続けた。6回の第3打席で158キロの内いっぱいの直球で空振り三振を奪ったシーンなどは今季一番と言っても大袈裟でない最高の一球だったが、それ以上に「さすが」と唸ったのが3回の第2打席だ。
結果は、フォアボールである。
だけど最高のピッチングだった。
その打席を振り返る。初球は内角低めにフォークが外れてボール。そして2球目からは全てカットボールを投げた。ボール、ストライク(ファウル)、ボール、そして4つ目のボール。
すべて内角を攻め込んだのだ。