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阿部慎之助を東京ドームで見送って。
引退試合は結婚式に似ていると思う。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2019/10/04 20:00
東京ドームは阿部慎之助へのメッセージで埋まっていた。ファンも、背番号10のユニフォームが目立っていた。
公式戦の引退試合、いいと思う。
最近は公式戦の引退試合が度々議論の対象になるが、個人的には球団側と選手本人とファンが納得していたら外野が口を出す問題じゃないと思う。
だって、結婚式と同じで当事者がいいと思ってやっているなら、真剣勝負がどうとか、キャンドルサービスに意味があるのとか、そこに正論をぶっこむのは野暮というものだ。
ドーム入口で応援ボードとポストカードを貰い22番ゲートから入場すると、いきなりビジョンの「ありがとう慎之助」の巨大ロゴが飛び込んでくる。そのまま場内を散歩すると、さすがに今日は背番号10のレプリカユニのファンが多い。
グッズショップも覗いてみたが、阿部の名前入りタオルは品切れのものも多かった。もちろん選手弁当「最高です!!あべんとう~豪快漢飯ver.~」も真っ先にSOLDOUTだ。
中央大の校歌に阿部も笑み。
4万6103人の大観衆が見守る中、「4番捕手」で先発出場する本日の主役がグラウンドに姿を現す。スタンドからは凄まじい拍手とシンノスケコール。
先発マウンドに上がったのは、引退会見でもう一度受けたい投手として「(一緒に)たくさん優勝も経験してきたし、日本にも長くいるマシソンかな。色んな思い出があるんで」 と名前を挙げた背番号20だ。山口鉄也や西村健太朗といった盟友たちはすでにユニフォームを脱いだが、この男は来日8年目のシーズンを迎えた。
そのマシソンが得点を許さず役割を終えると、2回表に2番手としてマウンドに上がったのは澤村拓一。ふたりの母校の中央大学校歌が流れる演出に、マスクを被る阿部から笑みがこぼれる。なかなかサインが合わず、'12年日本シリーズで見せた頭引っぱたきムーブ(中大ポカリ事件)かと思ったら寸止めで握手。阿部は一塁守備へと回った。
あの頃は先輩からの喝で許されても、今の社会の価値観じゃ炎上しかねない。ついこの間かと思ったら、阿部が首位打者や打点王を獲得と打ちまくりMVPに輝き、巨人が5冠を達成したあのシーズンはもう7年前だ。気が付けば、みんないい歳さ。長い時間が経っちまった。