セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
脅迫、暴行、報復上等の半グレ集団。
ウルトラスの実態を潜入記者が語る。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2019/10/02 19:00
セリエAなどのゴール裏のサポーターには危険な人物も存在する。それを浄化するための動きをユベントスなどは見せている。
中小グループが勢力を拡大中。
イタリアは、理想とお題目に反してままならない現実と、折り合いをつけようとする。人間らしく、もがこうとする。
「ラストバナー作戦」から5日後、セリエA第4節のユベントス対ベローナ戦が行われた。アリアンツ・スタジアムには厳戒態勢が敷かれ、4大グループがいなくなった南側ゴール裏スタンドからは、旗もバナーも怒鳴り声も消えた。歓声だけがあった。
アリアンツ・スタジアムからウルトラスは一掃されたのだろうか——。
否、代わりにこれまで頭を抑えられてきた中小グループが勢力拡大を始めたところだ。今のところ、各クラブの会長たちが仕切るリーグ機構もFIGC(イタリア・サッカー連盟)も、今回の捜査について称賛するでもなく賛同するでもなく、ダンマリを決め込んでいる。
ウルトラス問題の根の深さは、ちょっとやそっと掘ったぐらいではたどり着けない。
ひとつ確かなことがあるとしたら、いつか娘が恋人を連れてきて、その彼がウルトラスだったときに彼女にかけてやる言葉だ。
その世界を少し覗いた者として「彼との交際をよく考えなさい」と言おうと思っている。