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ロッテ福浦和也、引退挨拶全文――。
千葉の顔となった男の貪欲な26年間。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/09/26 12:00
26年間の現役生活を終えたロッテ福浦和也。ドラフト7位、背番号70から這い上がった男にふさわしいフィナーレだった。
「そんなに甘くなかったですね」
9月23日、現役生活最後の朝、試合開始5時間前の9時に球場入りをすると、関係者用駐車場には、大勢のファンが福浦の到着を待ち構えていた。
ふとそちらに目を向けると、白い布生地に塗装用スプレーで荒々しく書かれた一枚の横断幕があった。運転中のため一字一句読むことこそ出来なかったが、そこに込められたファンの想いを汲み取ると自然に目頭が熱くなったという。
その胸に去来したのは何か。
1998年の18連敗時、どんなに負けていても試合後、この駐車場で「頑張れ」と声をかけてくれたあのファンの姿だったのか。それとも2005年、2010年と日本一に輝き、共に優勝を分かち合った当時の感動が甦ったのか。喜びも苦しみもファンと共に歩んできた福浦のみぞ知ることである。
試合は、当初の福浦の心配をよそに、後輩たちが初回から爆発して、初回の福浦の打席が回るまでにまず3点。2回、3回にも効果的に追加点を奪って、試合の流れを呼び込んだ。
福浦自身は計4度まわって来た打席で期待されたヒットを打つことは出来なかったが、それをカバーする後輩たちの活躍。
「もうちょっといい当たりが出来るかなと思ったんですけど、そんな甘くなかったですね。これが今の実力だと思います」
試合後、報道陣たちに囲まれた福浦は照れ笑いを浮かべながらそんな言葉を述べた。
9回表にファーストの守備に就くと、最後はゴールデングラブ受賞3回の守備力を見せつけ、ダイビングキャッチ。ウイニングボールを自身のミットにしっかりと収めるというドラマチックな幕切れだった。