球道雑記BACK NUMBER
ロッテ福浦和也、引退挨拶全文――。
千葉の顔となった男の貪欲な26年間。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/09/26 12:00
26年間の現役生活を終えたロッテ福浦和也。ドラフト7位、背番号70から這い上がった男にふさわしいフィナーレだった。
「さすが福浦」というセンター返し。
とはいえ、それが仕事であるなら、準備を怠らないのが福浦のことである。
9月に入りレギュラーシーズンが佳境を迎えると、兼任コーチの仕事を一時お預けにして“選手モード”に入った。福浦と共に二軍打撃コーチを務める堀幸一や、今岡真訪(まこと)二軍監督の理解もあってのことである。
試合前にはファームの若手選手に交じって打撃練習に参加。9月12日のランチタイムにはロッテ浦和球場に隣接する室内練習場で、現在二軍調整中の有吉優樹を相手に、カウント付きの打撃練習もおこなって実戦感覚を養った。
「最初の20球は僕の球種を(ひと通り)打ってもらって、最後の1セットだけキャッチャーがサイン出してって感じでしたね」(有吉)
カウント付きの打撃練習ではセンター返しの鋭いライナーを放って「さすが福浦」と思わせた。
刺激を与え続けた貪欲な姿勢。
有吉が続ける。
「もちろん真剣勝負ですよ。本当に凄い。敵わないです。変化球も(何を投げるか)言っていないのに普通に対応してきますし、変化球後の真っ直ぐもキレイに弾き返されたので……」
実戦から遠ざかっているとは思えない福浦の仕上がりに有吉も目を丸くしていた。
「やっぱりあの人は自分にストイックというか、長くやっているだけあって、トレーニングとかもしっかり追いこんでやっていますし、あれくらいの年になったら普通は妥協とかしちゃうと思うんですけど、そういう姿にはとても見えない。錘(おもり)とかも凄いのを持ち上げているし、そういうところを僕ら若手が見たら、『僕らはもっと出来るじゃん』と、思っちゃいますよね」
こうした野球に対する貪欲な姿勢は、何も有吉だけが感じていることではない。チームの後輩たち全員が感じている共通項だ。
しかし、福浦は引退試合を前にした自身の状態についてこうも話す。
「こんだけ試合に出ていないのに戦力になるわけない。そんなに甘い世界じゃないですよ」
表情こそ笑みを浮かべていたが、自身のバッティングには辛口の評価を下す。
自分に対して妥協を許さなかった男の顔が、ここでも垣間見えた。