球体とリズムBACK NUMBER
オバマやケイティ・ペリーも大応援、
カルトなウェストハムに進撃の予感。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/09/25 08:00
ウェストハムを率いるペジェグリーニ監督。攻撃的なスタイルでプレミア6強体制を崩せるか。
ビッグ6の半数を上回る勝ち点。
この視覚効果を施すようになってから、昨シーズンはホームで1勝1分。今季は開幕戦でマンチェスター・シティに大敗を喫したものの、その後は2つのクリーンシートで2連勝を飾っている。ウェストハムは第6節を終えた現在、3勝2分1敗の5位。トッテナム(7位)、ユナイテッド(8位)、チェルシー(11位)と、ビッグ6の半数を上回っているのだ。
欧州蹴球名鑑でも書いたけれど、今季ばかりはプレミアリーグで6強の寡占が崩されてもおかしくない。そして現在、2年目の智将マヌエル・ペジェグリーニが束ねるハマーズや、ブレンダン・ロジャーズ監督の率いるレスターが、上位をかき回している。どちらも男としての魅力と戦術家としての知性を感じさせる優れた指揮官だ。
パンキッシュな「オーレ!」
ウェストハムはこの日、ユナイテッドよりも巧みな球さばきと堅い守備を披露した。
20歳のデクラン・ライスはスピーディかつダイナミックに動き回り、正確なつなぎ役としても機能。いぶし銀の主将マーク・ノーブルは海千山千の戦歴をもって、マンチェスター・ユナイテッドの小僧たちにフットボールのいろはを教えているようでもあった。ミッドフィールドで徐々に上手に立っていったハマーズは、主導権の移ろいを見極め、ペースを握った前半終盤に先制に成功する。
右サイドでボールを持ったノーブルが最善の選択に時間をかけ、縦に出すと見せて中央のフェリペ・アンデルソンにスクエアのパス。ブラジル代表アタッカーはこれをダイレクトで前方へ送り、ボックス内で浮き球を巧く処理したアンドレイ・ヤルモレンコが次の瞬間に左足でシュートを沈めた。
さらに後半の終盤には、それまでにも惜しいキックを放っていたアーロン・クレスウェルが、左足から美しい弾道の直接FKを右のトップコーナーに収め、勝負をつけた。キックオフ前と2つの得点の後には恒例のシャボン玉がピッチ上を舞い、アディショナルタイムにはパンキッシュな「オーレ!」がスタジアムに鳴り響いた。