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オバマやケイティ・ペリーも大応援、
カルトなウェストハムに進撃の予感。

posted2019/09/25 08:00

 
オバマやケイティ・ペリーも大応援、カルトなウェストハムに進撃の予感。<Number Web> photograph by Getty Images

ウェストハムを率いるペジェグリーニ監督。攻撃的なスタイルでプレミア6強体制を崩せるか。

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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“Oooole! Ole!!”

 ロンドンの日曜日の午後に怒号が響く。ウェストハムがマンチェスター・ユナイテッドを相手に、ホームで2点をリードしてアディショナルタイムを迎えた頃だ。紫色のシャツが自信満々にボールを回すたび、かつて悪名を轟かせたサポーターたちが嬉しそうにそう叫ぶ。

 スペイン語圏でよく耳にするこの掛け声も、英国首都の東部ではパンクロックの合唱のように響く。なにしろこのクラブのサポーターには、1970年代後半に生まれた初期パンクの人気バンド『コックニー・リジェクツ』がいる。

 '70年代から'90年代の英国で最も恐れられたフーリガン集団のひとつ『インター・シティ・ファーム』も、このクラブを過激に愛した人々だ。そんな血を引く一癖も二癖もあるファンたちは、腹の底からの低い音とはちょっと違う、少し高めの弾けるような「オーレ!」でブリティッシュ・ロンドを囃し立てる。

ロンドン・スタジアムに一体感が。

 9月22日、ロンドン・スタジアムはひとつになったように見えた。2012年五輪のメイン会場には今も陸上トラックが残っているため、イングランドのフットボール・スタジアムにしては客席からピッチが遠い。

 熱狂を生み続けた旧本拠地ボリーン・グラウンド(通称アップトンパーク)からここへ移った2016年夏以来、口の悪いコックニー(ロンドンの下町っこ)たちは新たなホームスタジアムに罵りの言葉を吐いてきた。昔のパンクバンドのボーカリストのように。

 そんな状況を改善すべく、ポルノ業界で財を成した2人のオーナーらフロントは知恵を絞り、今年4月にトラックを覆うカーペットをクラブカラーのワインレッドと青にした。すると、それまではただ距離を感じさせられたピッチが、不思議と浮き上がるステージのように見え始め、会場には少しずつ一体感が生まれだした。

【次ページ】 ビッグ6の半数を上回る勝ち点。

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