プレミアリーグの時間BACK NUMBER
嫌われ者がイングランドの宝物へ。
スターリングの勢いが止まらない。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/09/21 11:40
弾けるようなスピードが魅力のスターリング。EURO2020予選では4試合6得点と4戦全勝のイングランドを牽引している。
来年の欧州選手権の「主役」。
開始35秒で先制されたコソボ戦でも、すぐさまドリブルでチームを鼓舞し、数分後に同点のヘディングを決めたのもスターリングだった。
イングランドの主砲は26歳のケインであり続ける。ブルガリアのゴールに冷静に突き刺した2本のPKが、それを証明している。新手の戦力としては19歳のサンチョの他にも、ブルガリア戦で代表デビューを果たした、20歳のMFメイソン・マウントのような候補も現れてはいる。
それでも、決勝が代表ホームのウェンブリー・スタジアムで行われる来年の欧州選手権、そしてFA(サッカー協会)を筆頭に復活を世に告げる場として意識してきた3年後のW杯で優勝を目指すイングランドの「主役」は、24歳のスターリングである。そう実感せずにはいられなかった。
9月の代表2試合で計2ゴール5アシストを決めたスターリングは、マンチェスター・シティでの開幕戦ではハットトリックを達成。今季すでに8得点(9月17日現在)。これを「乗っている」の一言で片付けるわけにはいかない。
ペップ・グアルディオラの存在。
マンCでは昨季25得点。代表でも昨季前半からの8試合で計8得点。「コンスタントな好調」は、そこまでのレベルに実力が上がったと理解するべきだろう。
進歩の裏に、3年前の夏にマンCの監督となったペップ・グアルディオラの存在があることは周知の事実だ。古巣リバプールでも10代の頃からレギュラーを張っていたスターリングだが、なかなか「快速ドリブラー」の域を出ることができなかった。
ボックス内に到達すると、相手ゴールへの脅威が低下してしまうサイドアタッカーには、GKとの1対1で躊躇したり、力んで近距離からのシュートを外したりする傾向が見られた。4年前にマンC入りした当初も筆者は、やはり小柄な“スピード・スター”だがゴールやアシストといったドリブル後の成果物が乏しかった、ショーン・ライト・フィリップスのイメージを重ねることがあった。