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空手界のプリンスが武道館で優勝。
西村拳は東京五輪の金に突き進む。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2019/09/15 08:00
整った容姿から「空手界のプリンス」の異名を持つ西村。ジェルとスプレーでがっちりホールドした髪型も話題に。
準決勝で難敵に勝ち、思わず出た雄叫び。
決勝にたどりつくまでの4試合でも成長を見せた。決勝を含めた5試合の試合内容はさまざまだったが、すべて無失点だった。
ドイツ選手との2回戦(初戦)は終盤まで0-0と苦しんだが、残り5秒に後ろ回し蹴りを決めて3-0で劇的な勝利を収めた。続く3回戦はロシア選手に1-0で競り勝ち、準々決勝は米国選手に8-0と圧勝。
そして、「一番の山場だと思った」という準決勝では、'18年世界選手権優勝者の強敵であるアスガリ(イラン)を判定で下して雄叫びを上げた。西村はその世界選手権準決勝でアスガリに敗れていた。
「武道なので声を出してはいけないと自分で言い聞かせて試合に臨んだのですが」
西村は生真面目にまずはそんな風に自らをたしなめてからこう言った。
「でも、気持ちが入っていて、自然に出ました」
東京五輪の前に本番会場で難敵に勝っておくことに意味があったのだ。
得意の蹴りを読まれても、勝つ。
「最近は結果を出せば出すほど注目されて、いろいろな国の選手が研究してくる。その中で、きょう(1回戦~準決勝)はギリギリの勝利から判定勝ちもあった。あらゆる面で対応力がついたと思っている。8-0でも1-0でも勝ちは勝ち。泥臭くても良いんです」
得意の蹴りを読まれたときに備えて突きを強化してきたことや、筋トレで体幹を鍛えたことも功を奏したという。
「特に準決勝のアスガリ選手は身長が高くて(195cm)蹴りが入りにくい。突き押しを繰り返すことで判定勝ちをつかめたのではないかと思う。押し倒していくだけの馬力もつきました。いろいろなパターンの選手に勝ってこそ真の王者だと思っています」