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空手界のプリンスが武道館で優勝。
西村拳は東京五輪の金に突き進む。
posted2019/09/15 08:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
空手家の目はまっすぐだ。そして、堂々としている。背すじの伸びた姿勢は立っているだけで美しく、神経を極限まで研ぎ澄ませて闘っている最中も決して品格を失わない。
空手のプレミアリーグ東京大会が、来年の東京五輪会場である日本武道館で9月6日から8日まで行なわれ、男子組手75kg級は世界ランク1位・西村拳(チャンプ)が決勝で世界選手権5度優勝の“レジェンド”、ラファエル・アガイエフ(アゼルバイジャン)を下して優勝し、東京五輪の金メダル獲得へ向けて内外に大きくアピールした。
23歳の西村と34歳のアガイエフによる決勝戦は、呼吸ひとつにも駆け引きがあるような緊張感に満ちていた。
立ち上がりはともに相手の出方をうかがった。開始30秒で最初に技を出したのは西村。その後も仕掛けるのは西村。しかし、アガイエフの対応力がすばらしく、うまくかわされる場面が続く。
残り1分を切ると西村がテンポを上げ、30秒を切るとアガイエフもテンポを上げる中、西村には惜しい回し蹴りもあったが0-0で3分間終了。そして、旗判定の結果、西村に軍配が上がった。
西村はプレミアリーグ通算5度目の優勝。アガイエフとの通算対戦成績は7勝1敗となった。
「食い入るように見ましたし、鳥肌が立ちました」
特別な一戦だった。
日本武道館で開催された2008年世界選手権。当時中学1年生だった西村は、アガイエフを初めて生で見て大変な衝撃を受けた。身長165cmながら、70kg級と無差別級で2冠を達成。小柄な体で次々と敵を倒していく姿はもちろん、見たことのない投げ技、突き技、蹴り技をする姿に心を奪われた。
「当時はなかったことを1人だけやっていました。時代の先駆者です。食い入るように見ましたし、鳥肌が立ちました」