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イグアインにジェコ、ディバラ……。
放出要員、窓際族の逆襲が見たい。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byUniphoto Press

posted2019/09/11 18:00

イグアインにジェコ、ディバラ……。放出要員、窓際族の逆襲が見たい。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

恩師サッリのユーベ監督就任でチャンスをに手にしたイグアイン。逆境でストライカーの本能は覚醒するか。

ローマのジェコも逆境にある。

 ローマのエースFWエディン・ジェコも、この夏は同じように“窓際”にいた。

 昨季終了後は放出間違いなし、インテルと合意済みとの噂も流れた。ところが、事態が変わる。インテルFWイカルディの移籍先探しは遅々として進まず、ジェコの去就も宙に浮いたままフォンセカが新監督に。昨季チーム得点王のステファン・エルシャーラウィは中国へ去った。フォンセカとしては、フロントの思惑はどうであれ、高さも決定力もあるボスニア人ストライカー抜きのチーム作りは考えられない。

 ジェコは沈黙を守りながら"お別れ試合"と目されていた8月11日のR・マドリーとの親善試合で、1-2の劣勢で迎えた試合終盤に同点ゴールを決めた。試合後、フォンセカはジェコを称賛して「うちの選手だ」と明言した。

 5日後、フロントから三顧の礼で2022年夏までの契約延長オファーを受けたジェコは快くサインに応じた。

「チームメイトたちにずっと『残れ、残れ』と言われてきた。(新主将アレッサンドロ・)フロレンツィは『契約延長したら俺のキャプテンマークをやる』とまで言ってくれた」

 かつてトッティやデロッシが巻いた“ローマのキャプテンマーク”は決して軽くない。後継者たるフロレンツィは約束を守り、本当にジェコへ渡そうとしたらしい。

愚痴を言わずにゴールを決める。

 しかし、ボスニアの巨人は気持ちだけで十分と固辞した。「ローマはもう自分の家だ」と仲間たちとの5年目の開幕戦に臨み、ジェノアと3点ずつを取り合う激闘できっちりとゴールを奪ってみせた。

「元ローマの選手たちのクラブ批判を耳にするけど、それはおかしいと思う。出て行った後なら何とでも言える。言うべきことがあるならチームにいる間にぶつけるべきだ」

 一度は自分を放出しようとしたクラブに、本心では含むところがあるのかもしれない。しかし、それを口にするのではなく、ゴールという結果で示すのがジェコの流儀らしい。

 近年の移籍市場は相場の高騰と過剰戦力のアンバランスが問題になりつつある。70~80億円規模の移籍が頻発するなかで、収支バランスをとるための売却プランも市場戦略上、重要な位置を占めるようになってきた。

【次ページ】 必要とされていないチームで戦う。

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