セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イグアインにジェコ、ディバラ……。
放出要員、窓際族の逆襲が見たい。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2019/09/11 18:00
恩師サッリのユーベ監督就任でチャンスをに手にしたイグアイン。逆境でストライカーの本能は覚醒するか。
背番号9剥奪の屈辱にも移籍を拒否!
31歳で出戻りのイグアインは余剰戦力扱いで、フロントはローマやウェストハム等からのオファーを示しながら彼の肩を叩いた。ユーベの補強を取り仕切るパラティチSDは、どんなに強力な布陣を抱えていても血の入れ替えを画策する野心家だ。
今夏にもロメル・ルカク(マンU→インテル)、マウロ・イカルディ(インテル→パリSG)の獲得をあの手この手で実現しようとした。
そして、背番号9をイグアインから剥奪している。
3季前の夏から2季にわたってエースを務めた功労者に何と理不尽な仕打ちか。イグアインはそう思ったに違いない。
それがこの世界のルールであることを承知しながらも、彼は自分への移籍オファーに対して、首を横に振った。
新監督は新しく就任したチームの選手たちと信頼関係をイチから築かなければならない。だが、ナポリ時代に親分と舎弟の契りを交わしたサッリ新監督とイグアインの間に言葉は要らなかった。
サッリはキャンプの早い段階で愛弟子イグアインと絶対エースC・ロナウドを組ませた。レアル・マドリー時代以来6年ぶりに2人が攻撃フェーズで連続ワンツーを成功させると、親分は「おお、いいぞ! ワシ好みだ!」と歓声を上げた。
恩師サッリのお陰でアシストマンに。
新戦術とチーム全体のフィッティングが遅れるなかサッリが必要としていたのは、左に固定しているC・ロナウドと右の先発を勝ち取ったD・コスタとの間でバランスを取れるセンターFWの存在だった。
親分は肺炎で開幕2試合を欠場したが、代行監督マルトゥシエッロはパルマとの開幕戦の先発リストにイグアインの名を書き入れた。元エースの役割は現エースの黒子役だった。チームが1−0でしぶとく白星を挙げるなか、枠内シュートはゼロで無得点に終わったが、イグアインは誰よりもアシストプレーをこなし、仲間にシュートを打たせた。
4シーズン前に歴代最多得点記録を達成した点取り屋が、アシストマンとして転生した。レアル時代のカリム・ベンゼマがそうだったように、C・ロナウドはエリア中央に陣取ってくれるセンターFWとのプレーを好む。
「3トップの中央にイグアインを先発させたのは、彼には生粋のセンターFWとしての経験があるからだ。きちんと鍛えられたパルマ相手に、ゴールの真ん前でプレーすることに不慣れなFWを先発させるのはリスキーだった。開幕前の2日間の動きで確信させてくれた」(マルトゥシエッロ監督代行)
イグアインはポストプレーヤーであるだけでなく、ナポリ戦で証明したように超一流のフィニッシャーでもある。悩ましかった夏を越え、イグアインはスタメンという花形へと返り咲いた。