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イグアインにジェコ、ディバラ……。
放出要員、窓際族の逆襲が見たい。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2019/09/11 18:00
恩師サッリのユーベ監督就任でチャンスをに手にしたイグアイン。逆境でストライカーの本能は覚醒するか。
必要とされていないチームで戦う。
わずか3年前に約117億円を積まれてユーベに加入したイグアインや、ローマ歴代5位の得点数を誇るジェコは、実力とネームバリューがあるがゆえにクラブ経営陣にとっては格好の売却要員になりうる。
自身の売却益がクラブ経営に役立つことは、助っ人外国人として百も承知のはずだ。もはや望まれていないのなら、新天地でやり直した方がクラブと選手、双方のためになるケースも多い。
インテルから戦力外通告を受けたあと、クラブへの損害賠償請求など揉めに揉めた挙句、最終期限ギリギリでパリSG移籍が決まったイカルディの場合は、皆が万々歳で終わった例だろう。しかし、イグアインもジェコも踏みとどまった。必要とされていなかったはずのチームで戦い続けることを選んだ。
ディバラはイグアインと勝負。
“窓際族”は他にもいる。
イグアインと定位置を争うディバラは、フロントに「売らない」と伝えられていたのに、コパ・アメリカとバカンスの後で合流したら、自分自身もショーウインドーに並べられているのを知って愕然としたに違いない。
マンチェスター・Uやトッテナムとの交渉は成立寸前までいっていた。結局残留したが、ネイマールの去就次第ではパリSG行きの可能性は市場最終日まであった。ただし今季は、“偽9番”としてイグアインやマンジュキッチと勝負する宿命を背負う。
そんな彼らの叫びを止めることはできない。
「俺はユーベに帰ってきた。別のチームではなく、ここに残ってプレーしたいんだ」
ナポリ戦の生中継で流れたイグアインの放送禁止用語は、数時間後のダイジェスト番組や翌日の新聞記事では巧妙に編集され、カットされていた。それでもファンやライバルはイグアインの決意を感じ取っている。
2019-20シーズンは始まったばかり。序盤は新加入の選手たちに目が向けられがちだが、望まれなかった男たちの逆襲にも注目したい。
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