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トルコ戦完敗は日本バスケの出発点。
ラマスHCが見据えるW杯、五輪の先。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYukihito Taguchi
posted2019/09/03 11:00
W杯初戦のトルコ戦は完敗に終わった日本。世界大会の厳しさを思い知る結果となった。
米国ですら警戒する欧州勢のフィジカル。
アメリカでフィジカルの強い選手相手にプレーすることには慣れているはずの八村だが、それでも世界大会でのヨーロッパのチームの強さはまた一段上だった。最近では、審判の笛やルールの違いから、NBAやNCAAよりヨーロッパのほうがフィジカルな試合をしているため、アメリカ代表ですら、FIBAの大会でのフィジカルの強さを警戒するほどなのだ。
同じくアメリカで戦う渡邊雄太も、「フィジカルなディフェンスをしてくるだろうということも、ディナイ(ボールを入れさせないディフェンス)をしてくるというのもわかっていました。それに対して準備ができていると思ったのですが、彼らのほうがフィジカルなプレーをしてきた」と、頭ではわかっていたことでも、それに対応できなかったと語った。
大会前の強化試合でニュージーランドやドイツに勝ち、強豪アルゼンチン相手に競ったことで、自分たちがベストを出せばトルコにも勝てると自信をつけていた日本だったが、その幻想を初戦から打ちくだかれ、現実を目の前に突き付けられた。
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もっとも、これまではその現実を知ることもできなかったのだから、それだけでも一歩前進なのかもしれない。渡邊も「いい経験になった。ここから学ばなくてはいけない」と前を向いた。
ラマスHCの視線の先。
初戦に完敗したことで、2次ラウンド進出への道はかなり厳しくなったが、厳しい挑戦だということは大会前からわかっていたことだ。選手たちが2次ラウンド進出を目標に掲げていたなか、ラマスHCは最初から「ヨーロッパのチームから1勝あげること」という目標を掲げていた。次のチェコ戦に勝てば、その目標は達成できる。
「経験の差はもちろんあると思う。ただ、それですましていい場所じゃないと思う」というのはベテランの竹内譲次。「(対トルコの)試合を落としたことは痛いんですけれど、僕たちにとってどんな試合でも経験になりますし、ワールドカップを経て、オリンピックまで続いている」と、大会後のことまで見据えた。
ラマスHCの視線は、オリンピックだけでなく、さらに先まで見つめていた。
かつてアルゼンチン代表ヘッドコーチとして世界を戦い、世界の強さを熟知しているだけに、世界は一朝一夕で追いつけるものではないことをわかっていた。世界で戦えるようになるためには、世界の中で戦う経験を積み重ねるしかないのだ。今大会で世界の強さを体感し、来年の東京オリンピックを経て、そしてさらにその先で世界と戦えるチームに成長すること。それこそが、ラマスHCが目指していることだった。