プレミアリーグの時間BACK NUMBER
“1ミリ”も見逃さないVAR導入で、
プレミアリーグは何を失うのか?
posted2019/08/27 11:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto Press
この夏も他の欧州主要リーグより一足先に移籍市場が閉まり、プレミアリーグの新シーズンが始まっている。開幕早々にインパクトを残した新戦力ベスト11を選ぶのなら、ゴールを守るニューフェイスは「VAR」になるだろう。
決まったと思われたゴールを、開幕2試合で計4度も阻止しているのだから。
御察しの通り、この新顔は実在の選手ではない。8年前にチェルシーの監督となったアンドレ・ビラス・ボアスが「AVB」と略されて以来、イングランドのメディアでは二重姓を持つ人物の頭文字標記がすっかり一般的になっている。
例えば、マンチェスター・ユナイテッドの新サイドバックで、開幕戦からスタメンのアーロン・ワン・ビサカは「AWB」という具合だ。
そしてVARは今季から正式導入された「ビデオ・アシスタント・レフェリー」の略称に他ならない。
開幕節の10試合で計65回のVAR。
開幕節の全10試合で、計65回も出番が訪れたビデオ判定は、予想通り脚光を浴びることになった。評判は概ね好評で、いきなり判定が味方したクラブにすれば、待望の「新戦力」が期待通りの滑り出しを見せたことになる。
8月11日の開幕戦、ウォルバーハンプトン相手にスコアレスドローで終えたレスターは、ホームでの黒星発進を免れた。相手MFレアンデル・デンドンケルに蹴り込まれたボールが、空中戦の際にチームメイトの腕に触れていたことが確認され、ウルブズの先制点が取り消された結果だ。
翌週には、ウェストハムが引き分け(1-1)で開幕2連敗を回避した。アシスト役の左足が30センチほどオフサイドだった事実がVARで確認されていなければ、レアンドロ・トロサールのデビュー戦2ゴールでブライトンに軍配が上がっているところだった。