霞ヶ浦・飯塚恒介の勝負度胸。

　バッティングで驚いたのは、霞ヶ浦高・飯塚恒介中堅手（174cm69kg・左投左打）の勝負度胸とバッティング技術の確かさだ。

　この左バッター、1年生である。

　ショートバウンドにしか見えないスライダーを右手主導のスイングでライト前に持っていくバットコントロールは、予選で見てもう立派に“3年生級”だと考えていたが、甲子園ではさらにその「実戦力」の高さに舌を巻いた。

　相手は履正社高の清水大成、全国屈指の左腕だ。そうは打てないはず……とあなどっていたら、最初の打席からその予断がひっくり返された。

　139キロの速球が、あわやヘルメット直撃か！　と思った次のボールだ。危機一髪の直後だけに、少しは腰を引くなりひるむなりするかなと思ったら、むしろ踏み込んできて、真ん中のスライダーを振り抜いた打球がライナーで履正社高・池田凛二塁手の正面を襲った。

まさに、プロで働けるヤツ。

　もっと驚いたのは、その次の打席だ。

　やや高く抜けたスライダー、ちょっとタイミングを外され気味だったのに、右半身を止めながら、左半身だけを回転させる“王道”のスイングで、右翼手の右にもっと痛烈なライナーで打ち返した。

　左バッターが左投手の変化球を引っ張ってライナーのヒットにする。プロ選手でも難しい打ち方を、高校1年生が満員の甲子園で、高校球界有数の投手相手に、いとも簡単にやってのける。“ポイント”がいくつも加算された打ちっぷりに舌を巻いた。

　センターを守っても、俊足を飛ばした広い守備範囲と、投手仕様のしなやかな腕の振りからストライクのワンバウンドでバックホーム。

　プロで働けるヤツとは、こういう選手を指していうのだろう。

【次ページ】　大会前の評価はさほどでもなかった三塁手。