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渋野日向子の笑顔は何でできている?
「別にシンデレラでもないしなと」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byGetty Images
posted2019/08/22 11:50
NEC軽井沢72ゴルフトーナメント最終日18番のバーディーパットを外して苦笑いする渋野。この後パーパットも外して優勝争いから脱落した。
ゴルフの結果は自分の問題。
実感がない、というのは違う。
フィーバーがもたらす事象はできるだけ突き放して距離を取り、メジャーを制した選手としての自信だけすくい取って力に変える。そうやって彼女はすり減る心を守っているのかもしれない。
だからゴルフのことに関しては俄然、言葉が熱を帯びた。どんなプレーをするかは周りの喧騒とは関係なく、自分の問題だからだ。
最終日最終組で回り、首位タイで迎えた最終ホール。決めたら優勝の5mのバーディーパットを大きくオーバーし、返しの2mのパーパットも外れた。プレーオフにも残れずに終戦。痛恨の3パットに口をへの字に結び、目を吊り上げて、足早にクラブハウスに引き揚げた。
「人前で見せるものではない」という涙をロッカールームで静かに流した後、表彰式に参加し、会見場に現れた頃には、渋野はもう元通りの笑顔を取り戻していた。
勝利への欲求からくる“緊張”。
「3パットした理由はプレッシャーではないです。ただ緊張して手が動かんかった。なんでなんですかね。本当に最後のパットはめちゃくちゃ緊張したんですよ。自分でもなんでこんな緊張するんだろうと思って。手は震えてるし。なっさけねぇ! と思いながら」
“プレッシャー”はないが“緊張”はある。
「プレッシャーって勝たなきゃいけないみたいな感じですよね。まあ特に勝っても勝たなくてもいいと思ってましたけど、最後のボギーの打ち方がやっぱり悔しかったかな」
外的な要因がもたらすものがプレッシャーだとしたら、勝ちたいと願う内面から湧き出るのが緊張。予想外の緊張はプレッシャーが防波堤を乗り越えて内面を侵食してきたからなのか。それはまだ渋野自身にも分からないことだ。