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移籍市場に異変が! イタリアの
片田舎に大物外国人が来る訳は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/08/23 11:40
オランダの名門アヤックスを離れ、しばしば降格争いに絡むジェノア入りを決断したシェーネ。
アタランタにはシュクルテルが加入。
アタランタには、ベテランDFシュクルテルが加わった。2007-08シーズンから9シーズンもの間リバプールに在籍し、“レッズ”の壁として通算320試合を戦ったレジェンド級センターバックだ。昨季までフェネルバフチェでプレーした彼は、プレミアリーグにとどまらず、CLやELのピッチでも名だたるストライカーたちの前に立ちはだかってきた。
欧州最高峰の舞台にデビューしたのは、'08年3月のミラノだ。敵地「サン・シーロ」でFWトーレスが決勝点を奪ってインテルを下した試合で、シュクルテルはイブラヒモビッチを封じ込めた。
翌年2月のCL決勝トーナメントでも、敵地「ベルナベウ」でFWラウルなどのいたレアル・マドリーを完封している。
“育てて売る”が身上のクラブだが……。
クラブ創設112年目にしてCLに初出場するアタランタは、“育てて売る”が身上の育成王国だ。名将ガスペリー二の下でとびきりのスペクタクルを見せてくれるが、監督自身や選手、ファンを含め、クラブ自体にCLという大舞台の経験がない。まったくない。
だからこそ、彼らにはシュクルテルが必要だった。
どれだけ才能があっても、あの試合前の厳かなアンセムを聴いた途端に、緊張と感動で縮み上がってしまう若手より、ファンファーレを聞き流しながら“さてどう相手のエースを潰してやろうか”と腹の底でふてぶてしく考えているような仏頂面のストッパーを今季のアタランタは必要としている。
小さな町ベルガモのファンもそれをよくわかっているから、シュクルテル獲得の一報に彼らは沸き立った。
おらが町のクラブに、TVでしか見たことのない大物がやってくる。自分たちの応援するチームのために戦ってくれる。