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移籍市場に異変が! イタリアの
片田舎に大物外国人が来る訳は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/08/23 11:40
オランダの名門アヤックスを離れ、しばしば降格争いに絡むジェノア入りを決断したシェーネ。
大物外国人が来るカラクリ。
随分とスケールは異なるが、ちょうど1年前にイニエスタが神戸に移籍したときの興奮を思い出す。
もちろん、シェーネやシュクルテルのような大物外国人がイタリアの片田舎に来るにはカラクリがある。
イタリアでは、今季中に大きな税制上の優遇措置が施行される予定だ。お役所風に言うと“外国人高機能人材雇用促進のための税率軽減措置”というやつだ。
これによって、過去2年間外国に住んでいた選手や監督を雇う場合に、通常クラブ側が払うことになっている選手個人の所得税の税率が最高の43%から半分に軽減されるのだ。これは、45%前後とされている他の5大リーグ国の税率と比べて低い。
ビッグクラブにも恩恵が。
7月には軽減措置をテーマにしたセミナーがミラノで開かれ、専門家は「今回の改正は“爆弾”ですよ」と移籍市場におけるインパクトと影響の大きさを強調した。
つまり、懐の厳しいイタリアの地方クラブでも、去年までと同じ予算で、よりコストの高い選手を獲ることが可能になるということだ。
勘のいい方ならもうお気づきだろう。軽減税率の恩恵を受けるのは中小クラブだけではない。ユベントスはデリフトと今季の手取り年俸800万ユーロ(約9億4700万円)で契約を交わした。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙の試算によると、仮に現行の税制通りなら、ユーベは彼一人のために税込1400万ユーロの人件費を計上しなければならない。ところが、軽減税率施行後になると、それが1010万ユーロで済む。実に390万ユーロ(約4億6200万円)も節約できるのだ。
ビッグクラブも地方クラブも、イタリアは減税で勢いづいている。