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岡崎慎司、33歳のスペイン初挑戦。
「断る理由がない」ロマンと冒険欲。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byAgencia EFE/AFLO

posted2019/08/02 11:50

岡崎慎司、33歳のスペイン初挑戦。「断る理由がない」ロマンと冒険欲。<Number Web> photograph by Agencia EFE/AFLO

スペイン、マラガに加入が決定した岡崎慎司。欧州で3カ国目の挑戦となる。

なぜ岡崎は環境を変えるのか。

 身体能力が高いわけではない。「強烈な武器を持っていない」とも話す岡崎だが、シュツットガルト、マインツ、そしてレスターとクラブを渡り歩き、結果を残してきた。新しい環境、チームの状況、監督の思考、チームメイトの個性などを冷静に把握し、その上でチームに「足りない」と思われる仕事を見つけ、自分に落とし込んできた。

 岡崎は周囲を観察し分析する冷静な眼と、自身のできることとできないことを客観視する能力を持っている。まず仕事場となるチームの色に染まって居場所を得たあと、自身の色を出していく。そういった過程で自らを伸ばし、新たな武器を身につけてきた。

 だからこそ、彼は環境を変えることを望む。

 たとえ、自分にとってかけがえのない実績や武器ですら、拠り所にしてはいけない。そこに甘えてしまえば、新しい自分を手にすることは叶わないのだ。

レスターでの競争で思い出した貪欲さ。

 レスター移籍後、プレミアリーグ優勝を経験した岡崎は、厳しい生存競争に直面し、自身に消えかけていた「貪欲さ」を思い出したという。

「30歳を前にして、代表で後輩を育てるとか、そういうことを考え始めていた。でも、下のカテゴリーから、のし上がり、さらに上を目指そうとするチームメイトたちの姿を見て、自分には後輩のことを考えている余裕なんてないと思い知った」

 レスターで攻守を繋ぐ役割を担い、一定の評価を得た岡崎だったが、“得点を挙げるストライカーとして仕事をしたい”という欲は持ち続けていた。例えば2017-2018シーズンは前半戦だけで6得点を決めた。献身性と得点力を両立させるシーズンになるかと思われたが、後半戦は負傷離脱。ワールドカップ・ロシア大会でも、ギリギリのタイミングで傷が癒えたものの再度負傷し、不本意な結果しか得られなかった。

「今まで行ったことのない、イタリアやスペインでプレーしたい」

 新しい場所へ行けば、また新しい自分を発見できるに違いない。環境が変わることで味わう苦境が、自身を成長させてくれるという確信が岡崎にはあった。

【次ページ】 「断る理由がない」マラガの誘い。

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