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本職の二塁に浅村栄斗がFA加入も、
楽天・藤田一也が極める役割とは。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2019/07/29 20:55
今年5月にはプロ通算1000安打を達成した藤田。3度のGG賞に輝く守備の名手だ。
わざと自分にプレッシャーをかける。
37歳。藤田はより貪欲になった。
「緊張しないとダメなタイプ」と自認する男にとっては、このくらいの難題を課したほうがパフォーマンスに好影響をもたらす。
藤田は今季、5打点をマークしているが(成績は全て7月28日現在)、うち4打点が途中出場で稼ぎ出したものだ。
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ベンチスタートの試合では、わざと自分にプレッシャーをかけているのだと、藤田はメンタルコントロールを解説する。
「最初にベンチだと、試合には入っていけるけどプレーには入っていけないじゃないですか。だから、代打なら『ストライクゾーンに来たらなんでも振れ』『1球で仕留めんとダメやぞ!』みたいに自分に言い聞かせて打席に立つようにはしています。スタメンであればね、どうやったって最初からプレッシャーがかかりますから、そういう部分で思考の切り替えができているのかもしれませんね」
今季の出場はまだ42試合ながら、打率は2割9分7厘。藤田が自認する「切り替え」が機能していることは、数字が物語っている。
だからこそ、故障で離脱していた約1カ月は「長かった」と、藤田は悔やんでいる。
動体視力を養うため卓球を導入。
2016年から個人でパーソナルトレーナーと契約。トレーニングにしても動体視力を養うために卓球を導入するなど、毎年、新しい要素を積極的に求めている。
歩みが、止まることはない。
ベテランは今、新たな役割、芽生えた緊張感を抱きグラウンドに立ち、「衰える」と言われる肉体に日々、抗ってもいる。
「年齢的にも、そこと向き合っていかないといけないんで」
表情に悲壮感はないし、笑顔に陰りもない。
ガツガツと――そう向けると、藤田は「そうっすね!」と声を張った。
貪欲なベテランは死なず。去りもしない。
藤田は今も、チームの核である。