サムライブルーの原材料BACK NUMBER
塩谷司は中東で、代表で何を得たか。
「30歳を超えたら欲が出てきた」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/07/17 11:45
海外経験か、積み重ねた年齢か、塩谷司は精悍さをましたように見える。「いい時期」を今まさに迎えている。
「お前がUAEで一番いい選手だ」
試合環境も独特だという。
ACLでイランに行けば7万人、8万人の観客が集まる。男性のみの異様な雰囲気で、物が投げ込まれることもしばしば。UAEはカタールと断交している影響で、中島翔哉が所属したアルドゥハイルとアウェーで対戦した際はカタールの上空を避ける空路で通常の約4倍の時間をかけて移動している。
中東は熱狂的なサポーターが多い。試合が終わって駐車場に行くと、アルアインに勝った相手のサポーターがスコアを指で表して挑発することもたまにあるとか。
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「いい気はしないですよ。でもUAEの人は総じて優しいし、親切なんです」
そう言って塩谷は笑う。
チームメイトとは「お互いにつたない英語」でコミュニケーションを取る。
「彼らはどういう意味? と聞いたら、ちゃんと教えてくれる。いいヤツ、多いんです本当に」
オフでドバイに行った日に、別のチームのサポーターから呼び止められたことがあるそうだ。
「ウチのチームに来てくれないか」「お前がUAEで一番いい選手だ」
受け入れられ、認められている。その実感を持てたことが、自信にもなった。
家族での旅行中に呼ばれた久々の代表。
今年1月、UAEで行われたアジアカップ。
広島時代の恩師、森保一が監督を務める日本代表に復帰することが大きな目標となっていた。メンバー発表に、塩谷の名前はなかった。だが守田英正の負傷離脱によって、追加招集の連絡が入ったのだ。
「びっくりしました。発表されてダメやったなとなって、10日ほどオフをもらったんで家族とマルタに旅行に行ったんです。のんびりしていたときに電話がきて、家族で戻りました。向こうでもジムで体を動かしたりはしていたし、前の試合が終わって1週間くらいやったんでまったく問題もなかった」
森保監督と再会を果たし、こう告げられたという。
「ボランチより後ろでケガ人が出たらシオを呼ぼうと思っていた。ポジションはいろんなところで考えている」
そして与えられた役割は「まさかの」ボランチだった。