サムライブルーの原材料BACK NUMBER
塩谷司は中東で、代表で何を得たか。
「30歳を超えたら欲が出てきた」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/07/17 11:45
海外経験か、積み重ねた年齢か、塩谷司は精悍さをましたように見える。「いい時期」を今まさに迎えている。
一番の変化は、図太くなったこと。
中東で塩谷の何が変わったのか。
一言で表現するなら、図太くなった。
「18時試合開始となると、2時間前にミーティングをします。日本なら5分前には全員集まるのに、ここではみんな平気で遅刻してくる。10分遅れとか普通ですよ。試合会場に移動したらイスラム教の選手はお祈りをするし、みんな自分のペースで試合に入っていきます。逆に僕のペースでは進んでいかないので、やりにくいなって最初は感じていました。
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でも慣れって怖いですね。気にならなくなって、逆に試合が始まるっていうときに(精神的に)ピークを持っていけるようになりましたから」
1年前のインタビューでも聞いたエピソードであるものの、当時は「試合直前のピーク」まではなかった。
1年目よりも積極的に外に出かけるように。
本番に強い、勝負の大一番に強い。
CWCの塩谷は確かにそんな印象を持つことができた。
2年目のUAE生活は「快適でした」と笑みを見せる。1年目と違うのは、気分転換がうまくなったこと。
アルアインは小さな都市だ。日本食レストランがなくなったこともあって、車で1時間半ほど掛けてドバイのスーパーまで日本の食材を買い出しに行くことはあった。だが基本的にはアルアインで済ませていた。
「1年目はあんまり外に出なかったことが、もったいなかったねという話を妻としたんです。これからは積極的に出ていこうよ、と。ドバイにもアブダビにも車で1時間半くらいやし、道も広くて運転もきつくないですから。ドバイに仕事できている日本人家族の方と知り合いになって、ドバイのことをいろいろ教えてもらったり、たまにはブランチしたり……。
娘が遊べる遊園地もいろいろあるんですよ。室内でクーラーが効いていて過ごしやすい。大都市になると日本食だけじゃなく、おいしいレストランがいっぱいある。お寿司だっておいしいところあります。2年目は随分と、気分転換できましたね」
充実のオフがあるから、集中のオンがある。
家族と一緒に快適に暮らす日々が、パフォーマンスにも好影響を及ぼしていた。