プロ野球亭日乗BACK NUMBER
2007年の高橋由伸とタイプは違えど、
1番・亀井善行が勇気を与える理由。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2019/07/12 11:30
まさに巨人の“いぶし銀”といった立ち位置の亀井善行。原監督の信頼が厚いからこその1番起用だ。
福本豊が話した「ナイスアウト」。
「もちろんヒットを打つことが第1だと思います。初回の打席に先頭バッターがヒットを打つと、チーム全体に『いけるぞ!』というムードも出ますし、勢いがつく」
四球を含めて出塁率を高めることが、もちろん各打席でのファーストミッションだが、たとえアウトになるときでも、アウトの質をどれだけ高められるかなのだ。
かつて最強の1番打者として阪急黄金時代を支えた世界の盗塁王・福本豊さんからこんな話を聞いたことがある。
「阪急には『ナイスアウト』って言葉があったんです。僕なんかも1回に粘って、球数投げさせて三振して帰ってきても、西本(幸雄)さんから必ず『ナイスアウト!』って声をかけられたもんですわ。どれだけ粘って球数を投げさすか。いろんな球種を見させられるか。そういう風にアウトの質を高めることが、1番打者の仕事なんですわ」
たとえアウトになっても、三振しても、初球をポンと打ち上げて凡退してくるのと、フルカウントからファウルで粘って三振してくるのとでは、アウトの質が違うということだ。
亀井はオーソドックスなタイプ。
高橋は超攻撃的打者で、1番に座った'07年も初球を打ったときの打率は4割4分1厘と高打率を残している。決してボールを見るタイプではなかったが、それだけヒットを打つ能力が高かったから高出塁率を残して、リードオフマンとしての役割を十二分に果たした訳だ。
ただ、亀井が目指す1番はオーソドックスに、安打と四球で出塁率を高める一方で、凡退するときにも「ナイスアウト」を積み重ねるタイプである。
「追い込まれるとどうしてもヒットを打てる確率も下がってしまうので、そこではいかに相手投手の全球種の球筋を見せられるか。ファウルで粘って球数を投げさせて、相手の持っている球種を使わせる。やっぱりそこが自分の役割だと思っています」