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栗原恵がロンドン五輪落選で考えた、
自分の価値とバレーを好きな気持ち。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2019/06/29 12:00
東京五輪を目指す後輩たちには「怪我をせず、最後まで思い描くプレーをしてほしい」とエールを送る。
オリンピックは特別だけど、気負わなくていい。
引退会見では、代表の後輩たちへのエールやアドバイスを求められるたび、やんわりとかわした。
「みんなが本当にたくさんのものを背負ってコートに立っていることは、自分も経験してきてわかっているので、『頑張れ』とは簡単には言えません。オリンピックは出場するだけでプレッシャーがかかる舞台で、国を背負うということはそれだけの重みがある。
それが東京で開催されるということで、いつも以上にものすごいプレッシャーがかかる。だから自分がそれ以上のプレッシャーはかけたくありません。ただ怪我をせず、最後まで思い描くプレーをしてほしい。そういう気持ちで1ファンとして応援したいと思います」
重圧を背負い続けた栗原だからこその気遣いだ。ただ、栗原はこうも言う。
「今でこそ言えることですけど、自分でオリンピックは特別だ、すごいものだというのを作り上げてしまっていたのかなと思います。(オリンピックは)4年に一度で、そのために最終予選も戦って出場権を獲得した。もし、ここで失敗すれば、また4年間この大会はないって、変に自分でイメージを作っちゃっていました。
でも実際、たぶんどの試合も、大きさは関係なく、一緒なんですよね。準備して、試合に臨むって、シンプルに考えたら。確かに、海外の選手が照準を合わせて戻ってきたり、メダルがかかると強いチームは目の色が違ってきます。そういう面での特別感はもちろんあるんですけど、今振り返ると、そこまで気負わなくてよかったのにな、と思いますね」
栄光も挫折も噛み締めてきた栗原の言葉は、大舞台に向かおうとする現役選手たちへの、何よりの金言になるのではないだろうか。
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