プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“親子弾”若林晃弘を育てた
巨人二軍での「超攻撃野球」。
posted2019/06/14 15:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kiichi Matsumoto
父と子の“名刺がわり”の一発だ。
6月7日、東京ドームの巨人対ロッテ戦。4回2死一塁から巨人・若林晃弘内野手が放った打球が右翼席に吸い込まれていった。
プロ2年目の若林にとっては待望のプロ1号。しかも父・憲一さん(66)も1972年から10年間大洋に所属した外野手で、1977年に本塁打を記録している。この一発で長嶋茂雄・一茂親子や野村克也・克則親子らに続くプロ野球史上7組目の親子弾というオマケもついた。長嶋、野村親子ほど有名ではないが、もう1組の親子鷹を世に知らしめた一発だったわけだ。
父に手ほどきを受けて野球を始め、元々は右打ちだったが、スイッチヒッターに転向したのも憲一さんの勧めだった。そうして二人三脚で野球の道を歩み始め桐蔭学園高校から法政大学、社会人JX-ENEOSを経て2017年ドラフト6位でプロへの道を切り開いた。
プロ1年目の昨年は、一軍では先発2試合を含めて17試合に出場して18打数1安打。今季も4月に1回、一軍にお呼びがかかったが、その時は代走と守備固めで結果という結果を残せず、二軍にUターンした。
原監督にとって必然だった若林の活躍。
そうして二軍での好調さを買われて、再び一軍昇格を果たしたのが6月1日。
そこから5試合目の6日の楽天戦に「8番・二塁」で先発抜擢されると、左打席でプロ初打点を含む2安打の活躍を見せた。2試合連続の先発出場となったのがこのロッテ戦で、今度は記念の本塁打を叩き込んだ。
「(大歓声は)すごく気持ちいいです。本当にいい感触で打球が上がったので『入ってくれ!』と願っていました」
無心で放った一発に若林の声は弾む。
「素晴らしかったね。難しいボールだったけど、スイングに切れ味がある。彼の良さがその通りに出たということですね」
こう絶賛したのは原辰徳監督だった。
だが、この活躍は指揮官にとってみれば、ある意味、必然でもあった。
「もちろん彼自身の力というのが一番の要因でしょうけど、そこには使う側の方針というのも1つの要素としてあると思います」