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バルサの「9番」が隠す野性味。
水色を纏うスアレスは変貌する。 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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photograph byGetty Images

posted2019/06/16 11:00

バルサの「9番」が隠す野性味。水色を纏うスアレスは変貌する。<Number Web> photograph by Getty Images

バルサではメッシとのコンビでゴールを量産するスアレス。ウルグアイ代表ではカバーニとのコンビで猛威を振るう。

メッシの最良のパートナー。

 一方、戦術的柔軟性が高く、バルサのFWとして生き残るにはどうすればいいかをいち早く悟ったのが、イブラと入れ替わりで2010-11シーズンに加入したダビド・ビジャだった。

 ただ、アンリ以上に素早く左サイドの役割にフィットした彼も、不動のエースとしてゴールを量産したバレンシア時代とは異なり、バルサ在籍3年間で20得点の大台に乗せたシーズンは一度もなかった。

 そうやって歴史を振り返れば、2014-15シーズンからバルサで「9番」を背負うルイス・スアレスが、いかにスペシャルなストライカーであるかが浮き彫りになるだろう。

 リバプール時代はフィニッシャーとしての仕事に専念していたスアレスだが、バルサ入団後はその特別待遇をあっさりと手放し、持ち前の戦術的インテリジェンスと深い自己犠牲の精神で、瞬く間にメッシを支える最良のパートナーとなった。

 鎧をまとったような分厚い胸板と、突き出した大きなお尻が目を引く体はいかにも重そうだが、ドスドスと音を立てながらフリーランニングを繰り返して味方にスペースを生み出し、そして相手のパスコースを限定するフォアチェックも怠らない。

献身ながらもゴールを量産。

 特筆すべきは、こうした献身性を体現しながら、プレミアリーグ時代と変わらずにゴールを量産していることだろう。ストライカーらしいエゴを解放するタイミングが絶妙で、入団2年目の2015-16シーズンには大量40ゴールを荒稼ぎ。メッシ、クリスティアーノ・ロナウド(当時レアル・マドリー)の2大巨頭を差し置いて、見事ラ・リーガの得点王に輝いている。

 昨シーズンもゴールから遠ざかる時期はあったものの、最終的には得点ランク2位タイの21ゴールをマーク。メッシ不在のエル・クラシコ(10節)でハットトリックを達成し、31節のアトレティコ・マドリーとの首位攻防戦では、名手ヤン・オブラクの堅陣を破るゴラッソを突き刺すなど印象に残る働きが少なくなかった。

 チャンピオンズリーグ準決勝の第2レグで不発に終わり、リバプールに世紀の大逆転負けを喫したこと、またその直後に以前から慢性的な痛みを抱えていた右膝半月板の手術に踏み切り、バレンシアとのコパ・デル・レイ決勝を欠場したこと──その結果、チームが敗れたことも重なって──が尾を引き、一部ではスアレスが今夏の「売却可能な対象」となったとも報じられている。

【次ページ】 替えの利かない稀有なストライカー。

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ルイス・スアレス
エディンソン・カバーニ

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