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オランダで武者修行中の板倉滉。
マンCに戻るのは「自分次第」。 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph byRyu Voelkel

posted2019/06/09 08:00

オランダで武者修行中の板倉滉。マンCに戻るのは「自分次第」。<Number Web> photograph by Ryu Voelkel

2020年夏までフローニンゲンとレンタル契約を結んでいる板倉滉。結果を残し、シティに戻ることができるか。

「君はシティの選手だぞ」

 板倉は本当の意味ではまだシティの選手になってはいない。

 彼はシティからオランダのフローニンゲンにレンタル移籍し、現在は武者修行中だ。シティを筆頭にプレミアリーグのビッグクラブは世界中から才能ある若者を厳選し、獲得する。そして世界に散らばる提携クラブにレンタルで出し経験を積ませるというシステムを構築している。

 最終的にシティでプレーできるかどうかは活躍次第だ。お眼鏡にかなわなければ、さらなるレンタルが繰り返され、放出の可能性もある。板倉はそんな現実をはっきりと分かっている。

「今の自分では、シティでは試合に出られない。それは十分にわかっています。でも目指すのはあの場所です。そこを目指して普段トレーニングしています。これまでにも日本からビッグクラブに移籍しレンタルに出されたケースもありましたが、定着した選手はいないと思います。

 簡単な道ではないのは分かっていますが、目指すのはシティで試合に出ること。シティのクラブハウスでいろんな人に言われたんです。『君はシティの選手だぞ』と」

 胸には、まだあの場所ではプレーできるレベルにないという思いと、自分はシティの選手だという自負が同居する。オランダで切磋琢磨する中でその思いはどう変化していくのだろう。

小さな選手に吹っ飛ばされた。

 もちろん、フローニンゲンでも厳しい競争が待っている。シティから来た選手というだけで、簡単にポジションをあけ渡してくれるわけではない。

「シティへの移籍が話題になったのは肌で感じています。でも『これでシティの選手かよ』とは思われたくない。フローニンゲンで活躍していつかシティにいく。ひとつずつステップアップしていけたらいいです」

 恵まれた上背を感じる。足はすらりと長く、スマートな技巧が宿る。技術の高い選手は多く抱えるものの、日本の中盤にはこのタイプは多くはない。板倉は最終ラインから中盤まで複数のポジションをこなすことができるが、これから目指すのはボランチでの出場だという。

「昔のバルサのように後方から作っていくサッカーが好きですね。マイボールを大事にして相手を剥がしていくサッカー。自分は攻守において存在感をだしたい。

 日本ではフィジカルの勝負ではあまり負けたことはなかったんです。でもフローニンゲンでの練習中に自分よりも小さな選手に思い切り体をぶつけたら吹っ飛ばされたんです。まだまだ、自分は弱いなと。体重を増やして体を大きくして、1対1の強さ、ボールを奪い切る力をつけたい」

【次ページ】 同僚・堂安に対するライバル心も。

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