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伊藤美誠「人生がかかっている」
東京五輪のシングルス2枠の行方は?
posted2019/06/01 10:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Itaru Chiba/AFLO
5月26日、卓球の伊藤美誠は海外遠征に出発するにあたってこう語っている。
「自分の人生がかかっていると思っています」
同28日に始まった中国オープンへの言葉だが、その表現は決して大げさなものではない。卓球の東京五輪代表争いがそれだけ熾烈になっているからだ。とりわけ、女子の競争は極めて厳しい。
オリンピックを来年に控え、各競技の有力選手がクローズアップされる機会も増えてきた。普段はあまりスポーツを扱わないメディアでもそうだ。
卓球もしばしば取り上げられるし、筆者の元に、代表選考の現状に関する問い合わせが届くこともある。ただ、ときに前提条件がかみ合わないこともある。つまり卓球の代表選考基準がそこまで理解されていないのだ。
そこであらためて、伊藤の言葉を入り口に、卓球の代表選考の厳しさを伝えたい。
伊藤の言葉が大げさではない理由。
東京五輪の卓球シングルス出場枠は、男女各2名。加えて団体戦のメンバーとして男女各1名が選ばれる。
このうちシングルスは、2020年1月における世界ランキング上位2名が選出される。そして肝心の世界ランキングは、原則、直近1年間の中で獲得ポイントが大きい8大会の合計で決まる。
積み上げ型のポイントではないので、現在の世界ランキングで上位にいる選手がただちに有力なわけではない。ここに誤解が生じやすい。
特定の選手名を挙げて「代表争いピンチ」と伝える記事も散見される。たしかに5月現在では、石川佳純が世界6位、伊藤が7位、平野美宇が9位だが、石川と伊藤が代表濃厚とは言えない。上記3選手に絞られているわけでも決してない。ランキングは、あくまでもここ1年の成績。時とともに過去の大会のポイントが失効すると、この順位はいとも簡単に変動する。
大会で得たポイントの有効期限は1年間だが、世界選手権の個人戦・団体戦、グランドファイナルなどは次の大会まで有効とされる。世界選手権団体戦に関しては隔年開催のため、2018年大会のポイントは2020年1月発表のランキングの対象となる。
5月26日に幕を閉じたタイオープンまでの大会成績を元に、2020年1月の時点で有効なポイントに置き換えて計算してみよう。