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試合を楽しんでメキシコに完勝。
U-20W杯の日本、決勝T確実か。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

PROFILE

photograph byD.Nakashima/AFLO

posted2019/05/27 17:00

試合を楽しんでメキシコに完勝。U-20W杯の日本、決勝T確実か。<Number Web> photograph by D.Nakashima/AFLO

東京ヴェルディの下部組織で育ち、現在トップチームで活躍する藤本寛也。各年代別代表に選ばれ続けている逸材である。

「3人目、4人目の動きまで見るように」

 攻撃の狙いを守備から逆算して構築する……。

 ゾーンに入っていた藤本には、パズルを効率よく組み立てるために必要な試合の「完成形の絵」が完全に見えていたようだ。「3人目、4人目の動きまで見るようにしました」と語っていたように、ピッチという枠組みを完全に認識した上で、丁寧にパズルピースを当てはめていく。この卓越した読みが、チームを的確に動かしていたのだ。

 例えば21分のできごと。試合を動かしたのは、あきらかに藤本の深い読みからくるプレーからだった。

 鈴木冬の左からのクロスが相手DFにヘッドでクリアされた瞬間、藤本の目には「その後の展開」が見えていた。

「あの瞬間、『(自分のところに)来る』と思ったし、同時にメキシコはクリアしたボールを拾ってカウンターをしようとしているのが分かった。

 もし狙い通りにあそこでメキシコに拾われてしまったらピンチになるけど、逆に自分が拾えばチャンスになると思った」

 ヘッドでそれたボールが高く上がり、メキシコのワンボランチのエフライン・オロナが落下地点に入ろうとする姿を捉えると、藤本は加速してオロナの前に出た。

「最初はワントラップして落ち着かせようと思ったのですが、敵がかなり来ていたので、とりあえずアバウトにGKとDFラインの間にボールを入れて、そこでFWがうまく反応してくれたらいいなと思った」と、インサイドで山なりのダイレクトパスをゴール前に送り込んだ。これにFW宮代大聖(川崎F)が反応し、こちらもダイレクトで左足を一閃。ゴール右隅を射抜いてみせた。

藤本のパズルゲームがさらに冴え渡る。

 前半途中に、メキシコはダイアモンドからいつものボックス型にシステムチェンジをしたが、「メキシコはうまくいっていない中で、もともと想定していた形にフォーメーションを戻してくれたので、問題なく対応できた」と、その後も藤本は相手がズレた場所に効果的なパスを打ち込み続けた。

 1点リードで迎えた後半開始早々の52分、再び藤本が試合を動かした。

 右CKを得ると、「エクアドルもメキシコもCKの守備が似たような形で、ニアが結構空いていた」と、ニアサイドに正確な左足のキックを送り込むと、FW田川亨介(FC東京)がドンピシャのヘッドで合わせ、勝利を手繰り寄せる2点目をマークした。

【次ページ】 切れた……メキシコ代表の集中力。

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